2024年7月16日(火)

勝負の分かれ目

2022年7月6日

 さらにブルペンも鉄壁だ。抑えのスコット・マクガフ投手を筆頭に、そこに繋ぐまでの中継ぎ陣も充実している。「ミスターゼロ」として名を轟かせる切り札的存在の田口麗斗投手、そして23歳右腕の梅野雄吾投手も防御率0点台。他にも清水昇投手、今野龍太投手、大西広樹投手、木澤尚文投手、A・J・コール投手らさまざまな局面に合わせ、豊富な陣容が顔を並べている。

「再生工場」を彷彿させるチーム力の底上げ

 これら中継ぎ陣の起用に関しても高津監督のタイミングは絶妙だ。ヤクルトの逆転勝ちはここまでリーグトップの22試合。加えて逆転負けが7試合しかないのは、やはりブルペンが安定していることも大きな要因である。投手交代のポイントの見極め方においても高津監督の状況判断や洞察力が優れているからこそ歯車がきっちりと噛み合っているのは説明するまでもないだろう。

 元投手のヤクルトOBの1人は次のように高津監督を絶賛する。

 「試合中のベンチでは決して感情的にならず常に冷静沈着。我慢するべきところは我慢し、代え時と思えば躊躇せずスパっと動く。投手交代の判断を見誤って試合が壊れるケースは今のプロ野球で他チームの監督の間にも多々見られるが、その点において高津監督のタイミングの図り方は群を抜くほどに絶妙だ。そこは現役時代に長きにわたってストッパーとして活躍した自身の経験が大きく生きている。

 先発、ブルペンとマウンドに立つ投手たちがどうやったら気持ち良く投げることができるか。そういう投手目線での観点も疎かにすることなく起用を考えているから、投手陣も意気に感じて結果を出そうと気持ちを高ぶらせていく。ただこれは投手個々の能力だけでなく性格面も把握していなければいけないので、簡単そうに思えてもなかなかできることではない。投手起用における高津流の優れたマネジメント術の真骨頂ともいえるのではないか。いくら現役当時からの専門職とはいえ、少なくとも私にはマネできない」

 白星を積み重ねながら高津監督は目先のことばかりでなく先々を見据えつつ、チーム力の底上げも怠っていない。7月3日の横浜DeNAベイスターズ戦ではプロ7年目の小澤怜史投手がプロ初先発・初勝利で周囲を驚かせた。

 小澤投手は福岡ソフトバンクホークスを2020年オフに戦力外となり、トライアウトを経てヤクルトと育成契約を締結。昨季終盤から高津監督の考案で変則サイドスローに投球フォームを変えたことで制球が安定した。

 6月26日に支配下登録され、同日の巨人戦で3回無死満塁の大ピンチから2番手でマウンドに立ち、これを無失点でしのぐと6回までの4イニングを3安打2失点とロングリリーフで好投。次の登板でのプロ初勝利につなげ、復活を示すことに成功した。高津監督の小澤に対する投球フォームへのメスと思い切った起用が見事に実を結んだ格好だ。


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