今季のメジャーリーグで開幕から大きな注目を集めた「トルピードバット(魚雷バット)」と呼ばれる形状のバットは今後、日米の野球界に定着するのか――。
従来のバットに比べ、ボールを捉える「芯」の付近が太いのが特徴の魚雷バットは、ヤンキース打線が開幕3試合で球団新となる本塁打を量産したことで大きな衝撃を与え、日本球界でも使用する選手が出てきた。
特筆すべきはバットの開発者は物理学者だという点にある。近年はデータ解析技術の進化によって、選手のスイング速度や打球角度、投手のボールの回転数など様々な技術が「可視化」されてきたが、バットの形状すらも変える時代になった。
一方で、魚雷バットは先端が細く、そこに“弱点”があると早くも対策が講じられている。データ重視の近未来野球において、「無機質なデータによる用具開発」と「生身の人間(投手もしくは打者)の技量」の戦いは今後も避けて通りないだろう。
日本球界でも話題を“独占”
大型連休(ゴールデンウィーク)中の日本球界では、魚雷バットが話題を集めた。日本ハムの清宮幸太郎選手が6日のオリックス戦で実戦初投入すると、内角寄りの直球を右翼席へ放り込んだ。
新兵器投入直後の58打席ぶり一発に、スポーツニッポンによれば、「こんな効果てきめんなことあるのかと思いました。振りやすさはあるし、凄いバットが出てくる」と好感触を得た様子だった。前日の5日には、中日の木下拓哉捕手が美しい放物線を描く一発を左翼席へ運んでおり、これが日本球界の魚雷バット使用解禁後の「第1号」だと報じられた。
突如として出現した魚雷バットを開発したのは、昨季までヤンキースでアナリストとして働いていた物理学者のアーロン・リーンハート氏だ。マサチューセッツ工科大学出身で物理学の博士号を持つ同氏は、メジャーの打者がボールを従来のバットの芯よりもバットの根本に近いポイントでとらえることが多いというデータに着目。それならばと「芯」の部分を手元に寄せ、形状も太くしたという。
形状は規定の範囲内で問題はなく、日本のプロ野球でも4月11日から使用が認められ、阪神の大山悠輔選手ら一部の選手が実戦に持ち込んでいる。