2025年12月6日(土)

勝負の分かれ目

2025年5月8日

飛び交う賛否

 新たなバットの是非は、マスメディアの解説者やプロ野球OBのYouTubeチャンネルにとって、格好のネタとなっている。

 報道によれば、元巨人監督で日本テレビ『Going! Sports&News』の野球解説者・高橋由伸氏は実際に打った感想を「ヘッドの重みがない分、(インパクトの時に)押す力を今まで以上に使わないと反対に飛ばないかなと感じます」としつつも「コントロールがしやすい感覚、芯が手に近くなるので、ボールに当てやすくなるかも」とコメントしている。

 現役時代に3冠王を3度獲得した落合博満氏も、自身のYouTube「落合博満のオレ流チャンネル」で「(打球が)詰まっている人が使ったらアメリカでホームランが出始めたとかっていう話でしょ。だから芯にうまく当てる人は別に使う必要ないんだろうと思う」などと持論を展開した。他にも数多くの球界OBが賛否分かれた意見を発信している。

 スポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』の公式サイト「Number Web」によると、実は魚雷バットは、かつて日本の高校球児が甲子園で使用していたという。ノンフィクションライターの中村計氏が、野球専門店・ベースマン立川店(東京都)の店長を務める星徹弥さんへのインタビュー記事「『じつは36年前、夏の甲子園で“魚雷バット”がブームだった』あの高校野球アイドル(巨人OB)が愛用…日本メーカーが生んだ『元祖・魚雷バット』」の中で、「(※19)80年代の甲子園で上宮高の(※その後に巨人で活躍した)元木大介らが使っていました。実はSSKは数年前までパワービークという魚雷型のバットを作っていたんです」と紹介する。しかし、広く普及はしなかったという。※は筆者が加筆

データが野球を支配?

 このことからも、魚雷バットは決して万能ではないことがわかる。では、なぜ、メジャーで重宝されることになったのか。これは「動くボール」への対応と関係が深いといえるだろう。

 メジャーの投手は打者の手元でボールをわずかでも動かす球種を投げることで、バットの「芯」を外して打ち取ろうとする。同じ直球でも、日本の投手がまっすぐな軌道の「フォーシーム」を好むのに対し、メジャーの投手は打者の手元で微妙に動く「ツーシーム」を投じる傾向が強い。パワーのある打者から空振りを奪えなくても、芯で捉えさせずに打ち損じを狙うためだ。

 こうした打者の手元で内角に食い込んだり、沈み込んだりする球種で詰まらされてしまう部分に「芯」を持ってきたのが魚雷バットだ。従来のバットの「芯」を外された“ミスショット”を、魚雷バットは安打や本塁打にしてくれるということになる。落合氏が指摘するように「芯」でうまくとらえられる打者にメリットは少ないだろう。


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