2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年6月10日

描かれやすい顔

 大事なのは「華」だ。

 ミスターや王貞治選手がスターであることの証明は、顔が漫画に描きやすかったという点を以てしても証明されている。不思議だ。王の「O」長嶋の「N」で「ONコンビ」だ。

 ONは昭和の野球漫画の金字塔『巨人の星』以下いろんなアニメに登場したが、どの作品でも、一発でミスターだと分かる。

 いつも顔の半分が髭の剃り跡で真っ青に描かれる。

 漫画に描きやすい顔とスター性、そしてチームの強さは正比例の関係にある。はずだ。

 江川卓投手も桑田真澄投手も斎藤雅樹投手もみな特徴がはっきりしていて似顔絵向き。浦島太郎でもちゃんと描けるレベルだ。

 だから当時の巨人は本当に強かった。

 でもその後の巨人は、どうだろうか。なんか選手はみな「シュッ」としているけど、強くて憎らしい感じが失われている。

長嶋さん引退セレモニーの陰で「礼儀を知らない田舎球団」と揶揄された中日ファンの思い

 もしいま、星野仙一が野球界にデビューしたとしても、きっと「闘魂」は空回りしたに違いない。

 ああ、懐かしいなあ。強くて、倒したいと思えたジャイアンツ。

 ところで筆者がなぜここで長嶋さんの記事を書いているかといえば、それは『人生で残酷なことはドラゴンズが教えてくれた』(小学館新書)というヘンな本を書いたからだ。

 だからそういう視点も加えておくとすると、やはり各局の放送した「まとめ映像」だ。どの局でも流れたのが天覧試合のホームラン映像と引退セレモニーの「我が巨人軍は永久に不滅です」。それから「メークドラマ」という迷言を生んだ「10・8」(最終試合で優勝を決定)と日本シリーズのON対決だ。

 日本のプロ野球には12球団あるが、この4試合・場面に絡んだ球団はたった3つ。阪神タイガース、福岡ダイエーホークス、そして中日ドラゴンズだ。

 しかもドラゴンズは4つのシーンのうち2つに絡む。しかも当然のこと、すべて長嶋の引き立て役として。

 残酷だ。

 だって、あの引退セレモニーのシーン。全国の野球ファンの視点を集めたあの裏で、誰も注目しない優勝パレードをやってたんだよ、中日は。巨人のV10を阻止したチームなのに。

 あの優勝の翌日のスポーツ紙の一面はすべて「長嶋引退」。しかも優勝パレードのために一軍選手を名古屋にとどめ、長嶋さんの引退試合に二軍を送ったからって理由で「礼儀を知らない田舎球団」と揶揄された。


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