2025年12月5日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年6月12日

 中国では不動産の価値を上げるため、あるいは、オーナーの個人的な理由により、突然、マンションから退去するようにとの通達がくることも少なくない。入居者には何も非がなく、毎月の家賃をきちんと支払っていても問答無用で、強制的に退去させられるという話もよく耳にする。突然、家賃を大幅に値上げすることも珍しいことではない。

 このように、中国では居住者の立場は非常に弱い。中国では、結婚のために不動産を購入するという人が多いことが日本ではよく知られている例だが、このように、弱い居住者の立場に立ち続けたくない、安心して生活したいという理由も、不動産を購入するひとつのモチベーションになっている。賃貸物件に住んでいれば、いつ、理不尽な理由でオーナーから「退去」を命じられるかわからないからだ。

今後も〝中国のやり方〟を押し付けることも

 そうしたこともあり、中国人は中国国内だけでなく海外に住んでも、余剰資金があれば不動産購入に非常に熱心だ。日本にも中国系の不動産会社が非常に多く、統計はないが、1000社以上はあるだろうと話す在日中国人もいる。多くの日本人が知らない間に、日本の中の中国人による不動産経済圏のようなものがすでに出来上がっており、その中で売買しているのだ。

 日本に長く住む中国人は日本人の常識や日本のルール、マナーをしっかり守って生活している人が多いが、近年来日した中国人の中には、日本に中国の常識をそのまま持ち込み、それを押し通そうとしたり、中国式のやり方を行うことに何の疑問も抱かなかったりする人がいる。今回の板橋区のマンションの値上げ問題も、オーナーは「日本の家賃の相場がわからなかった」と話しているそうだが、間に立って、日本の常識を誰も教えなかった可能性もある。

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