筆者が専門とする中国人に限っていえば、これを目的として、観光ビザなどで来日し、日本で不動産を購入する中国人もいるし、経営・管理ビザを取得して来日し、不動産投資をビジネスとする中国人も少なくない。
中国人による日本の不動産購入が増え始めたのは2015年の「爆買い」ブームの頃からだ。訪日ビザが緩和されたことから来日し、ワンルームやファミリータイプの物件などを「投資用」で購入する人が増えた。
コロナ禍によりいったんは減少したが、コロナ禍の終盤、23年後半からは、中国の政治リスクや経済の悪化など、中国国内に存在する不安から逃れるように、日本に「潤」(ルン=移住、移民の意味)する人が増え、それに伴い、日本で「自分用」の不動産を購入、移住するようになった。最近では中間層の中国人の日本移住も増えており、多くの人は中国から持ち出した資金で、日本の不動産を購入している。
今回の問題の物件は複数回オーナーが変わっているという。どのような経緯でオーナーが中国人に変わったのかは不明だが、すでに居住者がいるマンションがまるごと中国人オーナーの手に渡ることは珍しいことではない。
筆者の知人で都内在住の在日中国人も、会社員として働きながら物件を4軒所有しており、自宅を除いて3軒を日本人に貸している。自宅のローンはその3軒の家賃で十分に支払うことができ、「老後は安泰だ」などと話していたが、今後、日本に住んでいながら、オーナーは中国人、借主が日本人というケースは増えていくだろう。
日本と中国で異なる不動産の仕組み
今回の問題が大きく報道され、日本人からの反発が強かったことが中国のSNSでも報道されている。在日中国人の中からも問題の中国人オーナーに対する批判が起きているため、しばらくの間は減少するかもしれない。だが、在日中国人の多くは、日本で不動産を購入することを「当たり前」のことだと考えており、できれば複数の不動産を購入し、家賃収入を得たいと思っている。
というのは、中国では不動産に対する法律や制度、考え方が日本人と大きく異なることも関係している。中国では土地は国家のものであり、企業や個人が土地を売買することは禁止されている。住宅は購入できるが、その使用権は最長で70年だ。
また、賃貸についても、中国には日本のような借地借家法は存在しない。日本では同法によって借主の権利は保障されている。ただし、日本では保証人や保証会社が必要で、敷金、不動産仲介料なども支払わなければならない。一方、中国では保証人などは不要だ。その代わり、借主を保護する法律は存在せず、オーナーの立場が非常に強いという特徴がある。
