2025年7月13日(日)

Wedge REPORT

2025年6月19日

目標との大きなギャップ

 その点からは期待したいところだが、林野庁が本当にこうした林業にベクトルを変えようとしているのかと言えば疑念がある。

 だいたい林野庁の「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」は、市町村の森林整備計画(民有林対象)のための指針であって、国有林では行おうとしていない。

 しかも林業政策の多くは、木材増産のため従来型の皆伐を推進している。ところが跡地の再造林がなかなか進まない。まだ4割に達していない有様だ。

 伐期を40~60年生とするのもおかしい。大木が混ざることで生物多様性は増すのである。そのほか早生の外来樹種の植林も勧めるのは、在来種を重視する本来の生物多様性とはズレがある。

 一方で二酸化炭素排出を削減するためと称して、森林を切り開いて建設するメガソーラー発電も各地に建設が進む。同じく増加したバイオマス発電所は、燃料の確保のため山の木を全部伐っている。

 さらにカナダやアメリカ、ベトナム、最近ではインドネシアから燃料用の木質ペレットを大量に輸入しているが、その多くが原生林を破壊して生産されていると指摘される。地球環境を考えるなら気候変動にも生物多様性にも悪影響だ。

 つまり経済性の追求や気候変動対策の名の元に、生物多様性を劣化させるような政策がてんこ盛りなのである。だが両者はトレードオフではない。むしろ相乗効果を出して高め合う林業を目指さないと、地球サミットで掲げられた目標に到達できないだろう。

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