佐古さんは言う。
「人口比では沖縄は日本の1%です。民主主義は、多数決で意思決定がされますが、99%の多数派が少数派の上でずっと胡坐をかき続けている状況は果たして本当に民主的と言えるのでしょうか。実は沖縄から民主主義の有り様を、国家の有り様を問うているのです」
際限なく広がる不条理な世界
佐古さんといえば「スポーツキャスター」の印象を持つ読者もいるのではないか。
1988年にスポーツ担当のアナウンサーとしてTBSに入社後、94年に報道へ移り、95年の阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件を伝え、麻原彰晃元死刑囚逮捕の現場からリポートし続けた。
沖縄に強い関心を持つきっかけになったのは、96年からレギュラー出演した『NEWS23』だ。朝日新聞記者時代、日本復帰前の沖縄で特派員を経験した筑紫哲也さんの影響を受け、四半世紀、沖縄に通い続けている。
「『沖縄に行けば日本がよく見える。この国の矛盾がいっぱい詰まっている』。筑紫さんのこの言葉が今でも忘れられません。沖縄を訪れると、不条理な世界が際限なく広がっています。その声を少しでも届けたいという思いです」
戦後、日本が高度経済成長を遂げた一方、米軍統治下の沖縄はその恩恵を受けられず、72年の日本復帰後も基地負担を一身に背負わされてきた。
「『沖縄問題』と言われることが多いですが、決して沖縄だけの問題ではありません。この状態を放置してきた99%の日本人こそ、改めて沖縄の置かれた状況について考えてほしいです」
政府は辺野古移設について、「粛々と進める」「唯一の選択肢」と述べ、翁長県政以降、沖縄県との対話がままならないような状況が続いている。
「筑紫さんは番組を作るうえで、『多事争論』の精神を大切にし、『意見を戦わせて議論しよう』『論を愉しもう』とおっしゃっていました。沖縄に限らず、今の日本には、これが欠けているように思います。議論の場が失われたときに何が起きたのかを、この国は知っているはずです。戦後80年、今こそ思い返すべきではないでしょうか」
