2025年12月5日(金)

終わらない戦争・前編沖縄

2025年6月28日

 毎年6月に沖縄県内でオール新作公演を行う「お笑い米軍基地」は、今年で結成20周年。最初は心配する声もあったが、蓋を開けてみると満員御礼。「イベント的に終わらせる予定が、続けてほしいという要望が多く、気づけば長く続けていた」という。今では、県内はもちろん県外からもやってくるお客さんも増えているそうだ。

世の中は軟らかくできる

 活力にあふれるまーちゃんだが、16年7月、突然、喉頭がんと宣告された。治療のため、7月から9月の3カ月間、入院生活を送った。

 「唯一病室に持ち込んだのは僕が好きなチャップリンのことを書いた本でした。ヒトラーを題材にした無声映画『独裁者』の裏側を知り、本当にこの人はすごいと。あの時代に一番危険な人物を題材にしてコミカルに表現するセンスと覚悟。当時僕は、声を失うかもしれないと言われていましたが、もしそうなったらチャップリンのように動きで笑わせればいいやと思いました」

 人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇である──。「お笑い米軍基地」は毎回、このチャップリンの名言で開幕する。まーちゃんは、この言葉を心の中心において活動しているのだ。

お笑い米軍基地は沖縄出身のメンバーで構成されている。「沖縄のことは沖縄の人間たちで伝えていきたい」というまーちゃんの思いがあったのだ(FEC OFFICE)

 「沖縄の人たちは歴史的に〝反骨〟の精神をずっと持っているんです。でも、僕が大切にしているのは〝軟骨〟の精神。反骨のままぶつかっても争いになるだけです。しかも、少数派の僕らは、負けてしまう。そういう時に、軟骨の精神で人を楽しませて、余裕を生んで融合していく。僕たちのお笑いで、世の中を変えられるなんて思っていません。でも、もしかするとちょっとだけ軟らかくすることはできるんじゃないかと思っています。みんなのつらさや悲しみをちょっと取り除きたいという願いも含めて。それが、いろんな国や地域にある歌や踊り、芸能の役割なのではないか。そう信じて僕たちはこれからも舞台に立ち続けます」

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Wedge 2025年7月号より
終わらない戦争 沖縄が問うこの国のかたち
終わらない戦争 沖縄が問うこの国のかたち

かつて、日本は米国、中国と二正面で事を構え、破滅の道へと突き進んだ。 世界では今もなお、「終わらない戦争」が続き、戦間期を彷彿とさせるような不穏な雰囲気や空気感が漂い始めている。あの日本の悲劇はなぜ起こったのか、平時から繰り返し検証し、その教訓を胸に刻み込む必要がある。 だが、多くの日本人は、初等中等教育で修学旅行での平和学習の経験はあっても、「近現代史」を体系的に学ぶ機会は限られている。 かのウィンストン・チャーチルは「過去をさかのぼればさかのぼるほど、遠くの未来が見えるものだ」(『チャーチル名言録』扶桑社、中西輝政監修・監訳)と述べたが、今こそ、現代の諸問題と地続きの「歴史」に学び、この国の未来のあり方を描くことが必要だ。 そこで、小誌では、今号より2号連続で戦後80年特別企画を特集する。前編では、戦後日本の歪みを一身に背負わされてきた「沖縄」をめぐる諸問題を取り上げる。


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