2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月1日

 しかし中国は、今米国はロシアのクリミア制圧の事で頭がいっぱいだと知っている。米国は「9点線」を明確に否定し、国連海洋法条約に関する法廷闘争でもフィリピンを支援しているが、座礁船の件ではフィリピンに自制を求めるだろうと中国は見越している、と報じています。

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 3月11日のフィリピン外務省の公式声明は、問題のアユンギン礁は、フィリピンの大陸棚に属するので、ここに座礁した船舶に対する補給を妨害した中国の行動は1982年の国連海洋法の下のフィリピンの権利に対する明白かつ緊急の脅威である、と述べています。

 これに対して、中国側の報道官は、フィリピンの船は建設機材を積んでいたものであり、中国とASEANの行動規範に違反すると声明したそうです。補給を遮断されたフィリピンは、座礁した船に滞在している海兵隊員に対して、空から補給したようです。

 南シナ海における中国の強硬姿勢は、中国の典型的やり方の一つです。

 中国は、長期的に決して諦めず、一歩一歩既成事実を固めてきます。もっとも典型的な例は、西沙、南沙群島で、1954年フランスが植民地を手放した時に、西沙の東半分を占拠し、それから20年アメリカのベトナム撤兵を待って西半分を占拠し、更に10年余で、ソ連海軍のカムラン湾撤退を待って南沙群島を占領しています。また、当初は漁船、やがて漁船の避難港などの段階を経て、その間一歩も下がることなく、既成事実を積み重ねています。

 この例を見れば、中国は、尖閣諸島での領海侵犯などは今後とも決して緩めることはないのでしょう。中国は戦争の一歩手前まで既成事実を積み上げるのですから、これに対しては辛抱強く対応して行くしかないことになります。

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