2024年11月24日(日)

解体 ロシア外交

2014年5月1日

 今回の首脳会談の最重要議題は、対中問題とTPP(環太平洋パートナーシップ協定)であった。だが、25日に発表された両国の共同声明にも明記されたように、ウクライナ問題での協力も訪日の一つのインセンティブになったはずだ。米国としては、対露制裁に及び腰の日本との強い連携を確保しておきたかったに違いない。

 TPPでは合意はならなかったが、対中問題では日本は満足な成果を得ることができた。対中問題において最も懸念されているのが尖閣問題だ。ロシアがクリミアを編入してから、ロシアと歴史認識を共有する中国が尖閣で同じような動きに出るのではないかという懸念が日本では高まっていた。そこで日本は、尖閣を守るべく、米国が日米安保を尖閣問題にも適用する、すなわちもし尖閣問題を巡り日中戦争が始まったら、米国が日本側で参戦するという言質を取ろうとした。従来、尖閣への日米安保の適用は、米国の国防長官と国務長官が確認していたが、クリミア情勢を受け、日本はより確実に支援を確保しておきたかったと思われる。

 一時、尖閣問題がTPP問題の条件にされるなど、交渉は難航したものの、両首脳は中国の「力による現状変更」に明確に反対することで一致し、オバマ大統領は共同会見で、「尖閣は日米安全保障条約第5条の適用対象」だと明言した。

 また、尖閣はそもそもクリミアにはならないと考える識者も少なくない。国際政治学者であり、米政権内外で日米関係にも寄与してきたジョセフ・ナイ氏は、クリミア情勢を受け、中国が尖閣諸島を強奪することはあり得ないと述べる。何故なら、米国が防衛義務を持っていないウクライナではロシアが圧倒的な軍事力を背景に強い出方をしたものの、米国が防衛義務を持つ日本の尖閣諸島を巡っては中国に軍事的な優位性はなく、クリミアと尖閣の状況は全く異なっているからだという。

状況を見極めつつ、適切な外交を

 このように、日本の外交的なポジションは、現在、決して悪くない。大切なのは、外交における基本スタンスではぶれず、しかし状況に応じて柔軟な態度をとっていくことだろう。具体的には、力による領土の変更を決して認めない姿勢を貫きつつ、対露・対米外交の双方で、チャンスを活かしつつ、日本の国益を最大化していくべきである。


「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。


新着記事

»もっと見る