2025年12月5日(金)

勝負の分かれ目

2025年7月8日

 「皆さん、拍手してみましょう」

 会場アナウンスに会場が、アンコールを期待して湧き上がり、大歓声と手拍子の音が響く。

 そこへ舞い戻ってきた羽生さんが、今度は雰囲気を一変させる「Let Me Entertain You」で会場と一体となって盛り上げた。

 「先輩方(鈴木さん、本田さん)、本郷さんは後輩ですが、地元のスケーターのみんなと一緒に一つのショーを作り上げることができたこと、仙台の地で、みんなで何かを作り上げるということの楽しさと、仙台の方々、また仙台に集まってくださった方々に対して発信できたことがすごく良かったなと思います」

 ショーを終えた羽生さんは本田さん、鈴木さん、本郷さんとともに囲み取材に応じ、ショーの感想をこう語った。

難しい常設の氷設置への感謝

 日本フィギュアスケート発祥の地として知られる仙台市は、羽生さんと2006年トリノ五輪女子の荒川静香さんという2人の五輪金メダリストを輩出した。そんな地元に新たに誕生したリンクは、JR仙台駅から在来線で1駅と交通アクセスにも恵まれている。約3400の客席も備わり、今後は練習場所としてだけではなく、アイスショーや競技会会場としても活用が期待される。

宮城県のフィギュアスケート競技の発展に期待される通年型スケートリンク「ゼビオアリーナ仙台」(筆者撮影)

 ゼビオアリーナ仙台は、東日本大震災後の12年に完成。プロバスケットボール、Bリーグの「仙台89ERS」の本拠地として利用されてきたが、新たに通年型アイスリンクが設置された。新アリーナはアイスリンクとして利用されるだけではなく、氷の上に断熱材などを敷くことでバスケの試合や音楽コンサートの会場も併用できる。

 羽生さんはリンクで滑った感想を聞かれると、こうした施設の背景も把握した上で、こんな言葉を紡いだ。

 「専門的なことを言えば、バスケットボールの試合や、アーティストさんのイベント用に作られていた会場なので、そもそも常設の氷を張るというのは非常に大変な作業だったと思います。そうした状況の中で、(会場内の)室温や湿度管理、本当に色々なことを試しながら、やっとできた氷だということを改めて感じつつ、そこにすごく感謝したいと思いました。まだ、氷も張ったばかりですので、これからいろんな経験を積んで、今日のことも含めて、もっともっと、試合でも活躍してくれるような氷になっていってくれると思います。

 また、この会場は、お客さんが入った時に、鈴木さんも言っていましたが、すごくその(客席の)表情が見える、すごく近くで演技の質感を感じてもらえる会場の一つだと思いますので、ぜひ足を運んでいただけたらうれしいなと思います」

 主役のスケーターが滑ることができる環境には、たくさんの裏方の人たちの支えがある――。この日を迎えるために、氷や会場の設営に尽力した人がいるということを念頭に置いたコメントだった。


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