リンクのバックヤードで行われた囲み取材。羽生さんがこのコメントを発していたとき、すぐ近くで取材の様子を見ていた関係者が、何度も頷きながら、感謝をしているような姿があった。羽生さんの言葉に、これまでの準備と努力が報われたような様子だった。
一人残って観客席へ振った手
羽生さんはショーのエンディングでは、「表情まで見える」という客席に何度も笑顔で手を振っていた。出演者でリンクを周回しながらのフィナーレ。1周目は最前列の人たちへ、次の周は視線を高く、上段の客席へ、ときに両手を振った。
ゆっくりと滑りながら丁寧に歓声に応えていくうちに、羽生さんの後ろにスケーターたちの“渋滞”が自然とできていた。最後は列から抜けて、歓声に応え続けた。気が付けば最後尾。いつものようにリンクには一人だけ残っていた。そして、「ありがとうござましたー!!」と感謝の雄叫びで締めくくった。
こけら落としにふさわしい晴天に恵まれたこの日、会場周辺は開演前から長い行列ができていた。満員で埋まった客席を見渡すと、いつもの羽生さんの単独公演などと比べると、幅広い年代の人たちの姿が目立った。
今回のチケットは、一般の販売枠とは別に地元向けの「市民枠」が設定されていたからだろう。仙台市民と一般の応募は合わせて3万件を超え、約3400人の当選を射止めるには高倍率なのは違いないが、市民枠が設けられたことで、もしかすると、初めて地元のスーパースターでもある羽生さんの演技を生で観る機会に恵まれた人もいたかもしれない。
ファンの人にとっても、単独公演も含めて会場のチケットはいつも高倍率になる。だからこそ、一期一会の機会に精一杯の感謝を伝え、コミュニケーションを図る。それが「羽生結弦」流なのだろう。仙台が生んだ偉大な絶対王者、羽生さんの“らしさ”全開の囲み取材とフィナーレだった。
