2025年12月5日(金)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2025年7月30日

外国人の受け入れ規制をしていいのか?

 ドイツ経済・社会は、外国人または帰化した外国人なしには成り立たない。ドイツ政府によると、23年のドイツの人口8390万人の内、外国人または帰化した外国人の比率は29.7%(2490万人)だった。

 ミュンヘンのようにグローバル企業が多い大都市では、人口に外国人または帰化した外国人が占める比率が、24年末の時点で49.5%に達している。この町にはBMWやシーメンスなど大企業の本社が多く、IT技術者が多いインドからの移住者の数が最近目に見えて増えている。

 これに対し、法務省によると24年末に日本に住んでいた外国人の数は約377万人。24年までに日本に帰化した外国人の数は約61万人で、合計438万人となる。

 総務省によると24年10月の時点で日本の人口は約1億2380万人。つまり日本の人口に外国人と帰化した外国人が占める比率は3.5%となり、ドイツのほぼ8分の1だ。

 筆者は、高齢化と少子化がドイツ同様に急速に進んでいる日本でも、経済水準を維持するには、合法的で勤勉な移民の受け入れ数を増やす必要があると考えている。日本国外では、各国間で優秀な頭脳、勤勉な人材をめぐる競争が激しくなっている。

 こうした中で、外国人の受け入れ規制を前面に打ち出す政党が参議院での議席を大幅に増やす状況は、日本が優秀かつ勤勉な合法的な移民を増やす上で、プラスにはならない。日本のメディアや政治家は、我が国の経済的水準と社会保障制度の維持という、長期的な国益を視野に入れながら、外国人について議論してほしい。

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