2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月20日

 米国は歴史的和解を促進できる。米国も対話のパートナーになるのがよい。

 和解プロセスに有利な環境を国家指導者は作るべきである、と述べています。

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 この論説はA級戦犯分祀、遊就館の閉鎖で靖国を変革し、天皇陛下を含む日本の指導者が靖国を参拝できるようにすべきであるというものです。靖国参拝を頭から否定せず、戦没者慰霊は政治指導者の義務としている点は歓迎できます。靖国参拝は米大統領のアーリントン墓地訪問と同じようなものという考え方が、この2人にはあります。

 A級戦犯の分祀はこれまでにも議論されてきましたが、神道の教義上、無理と言うことになっています。国家がこういう教義事項に介入することが、現憲法上可能なのか、適切なのか、疑問です。

 次に、歴史をめぐる対話の提案についてですが、対話が少ないので歴史問題での対立があるような認識は、正しくありません。歴史認識は各人各様であって、それはその人の価値観と密接に関係しています。

 政府が、これが正しい歴史観と定めるようなことは、自由民主主義ではありえません。中韓が歴史を外交問題にして、自分の歴史観を押し付けるようとするので困難が生じているので、日中韓に同様に責任があるのではありません。従って、対話は、歴史観の多様性を認めること、一定の史観の強制をやめることを目指すのがよいでしょう。この論説が言うような、歴史の実質問題での合意を目指すことは、無駄な努力になります。歴史の見方は価値観と密接不可分であり、科学的な命題ではありえないのです。

 この論説は、靖国問題についても、その他の歴史問題についても、深みに欠けるきらいがあります。よく間違えるのは、昭和天皇の参拝がされなくなったのは、A級戦犯合祀の2年前であり、その原因は、三木内閣の公的参拝か私的参拝かの答弁だったことです。従って、A級戦犯が理由ではありません。

 尚、中韓の歴史認識は、天安門事件の総括を見ても、歴史を直視しないプロパガンダです。そういう国の指導者に歴史を直視せよと説教されるいわれはありません。

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