在留外国人
コロナ禍以降で100万人増加
新型コロナ禍以降、在留外国人数は過去最高を更新し続けている。法務省出入国在留管理庁によれば、その数は2024年末時点で約376万人に達し、21年末からの3年間で約100万人増加した。日本人の嫌がる低賃金・重労働の仕事で深刻化している人手不足を緩和するため、政府が外国人労働者の受け入れを増やし続けているからだ。
技能実習生は約28万人から約46万人、留学生は約21万人から約40万人、特定技能外国人は約5万人から約28万人に増加した。留学生には勉強そっちのけでアルバイトに明け暮れる者が数多い。それでも日本語学校を修了すれば、学費と引き換えに日本語能力など問われず専門学校や大学に入学できる。そして卒業すれば就職も簡単だ。一方、以前は最長5年までしか就労が認められなかった実習生も、19年の特定技能制度創設によって無期限に日本で働けるようになった。日本の賃金は欧米諸国はもちろん、隣の韓国などにも追い抜かれた。政府には外国人労働者の数確保への危機感が強い。そこで留学生や実習生を日本に引き留めようと躍起になっている。
実習生や特定技能外国人の半数近くを占め、外国人労働者で最も多いのがベトナム人だ。東京都内の人材派遣会社で彼らを日本の就労先に斡旋しているベトナム人社員(30代)は、自らが留学生として来日した10年前と今の違いをこう話す。
「私が日本へやってきた頃、日本はベトナム人にとって最も人気の出稼ぎ先でした。でも、ベトナムの賃金は高くなり、円安も進みました。わざわざ(送り出し業者に支払う手数料や日本語学校への学費などで)大きな借金をしてまで日本へ行くメリットがなくなった。ベトナムでも大手外資系の工場では月10万円以上稼げますからね。今、日本にやってくるのは、他の国へ出稼ぎに行けず、ベトナムでも仕事の見つからない貧しい人たちです」
同社員によれば、実習生がビザ取得のため提出する履歴書の「9割」には嘘が書かれているという。実習生には母国でやっていた仕事に日本で就くというルールがある。その規定に沿うよう職歴を捏造するのだ。
ビザ取得時の書類捏造は、ベトナムや南アジア諸国出身の留学生の間でも当たり前に横行している。留学ビザの発給には、日本でアルバイトせず学費や生活費を工面できる経済力が求められる。そんな経済力がある途上国の留学希望者は珍しい。そこで金融機関などの担当者に賄賂を渡し、銀行預金残高や親の年収などの証明書を捏造する。その書類を日本の入管当局は受け入れ、ビザを発給する。実習生が来日するため行う職歴の捏造と同様、いちいち指摘していれば留学生が増えず、政府の方針に反してしまうからだ。
「ポスト・ベトナム」で
注目集める「インドネシア」
つまり、外国人労働者の中心を占める実習生、留学生とも、多くが捏造した書類を使って日本にやってくる。しかも入国のハードルは、日本語能力を求めないに等しい。これでは人材の「質」など担保されるはずもない。
そんな緩い条件の下でも、日本での出稼ぎを希望するベトナム人は減りつつある。そこで「ポスト・ベトナム」として注目を集める国の一つが「インドネシア」だ。実習生と特定技能外国人を合わせると15万人を超え、過去3年間で3倍に増えた。国籍では約35万人のベトナムに次ぐ数だ。
30年以上にわたりインドネシア人実習生を現地で育成し、日本での受け入れ機関も担ってきた公益社団法人「日本・インドネシア経済協力事業協会」の柴田雅代理事長は、インドネシアからの受け入れ急増の背景には「第一にベトナムの問題がある」と指摘する。「問題」とは「ベトナム人実習生の間では、母国の送り出し業者に支払う手数料を借金して来日した揚げ句、職場からの失踪や犯罪に走るケースが目立っている」ことだ。
「この問題により、ベトナムにとって代わり自国からの送り出しを増やそうとインドネシア政府を挙げてのお祭り騒ぎになっている。しかし人材の質が落ちている現実が心配です」
柴田氏によれば、特定技能創設前は100社ほどだったインドネシアの送り出し業者は今では500社以上に急増しているのだという。
「日本から帰国した元実習生などが次々に送り出し組織をつくっている。事前の研修を十分に実施できる有資格団体でなければ、他の教育機関(日本語学校など)と組まざるを得ず、費用も二重払いとなり(実習希望者から)70万〜80万円以上の手数料を取るようなところもある」
実習生の送り出しは、数が増えればそれだけ儲かるビジネスだ。元実習生による参入、手数料の高騰、また人材の質の悪化など、インドネシアの送り出し現場ではすでに「ベトナム化」が始まっている。

