2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月29日

 しかし、2カ国が完全に連携を断つことはない。アメリカはアフガニスタンへ向かう経路ではロシアの領土を通過しており、宇宙部門でも協力している。また、老朽化したロシアの武器を解体する共同プログラムもまだ機能している。

 さらに、オバマが1期目に締結した新START条約も継続しているし、米空軍はロシアが作ったエンジンを使ったロケットに依存している。アメリカはロシアをWTOから追い出そうとはしない。加えて、米ロはシリアの化学兵器の廃棄作業やイランとの交渉でも協力している。

 それでも、もしウクライナの状況が落ち着いたとしても、米ロ関係は平常には戻らないだろうと専門家は分析している、と論じています。

* * *

 たしかに、ウクライナ、クリミア事件勃発以来のオバマのロシアに対する態度には従来と異なるものがあります。

 それは、シリアでレッド・ラインを引きながら妥協した弱腰が非難を浴びたことを意識して、この問題では、強い姿勢を示そうとしたのだと解されています。

 ただ、オバマは従来ロシア政策については、就任早々に「リセット」のスローガンを掲げたことはありましたが、実際にはあまり内容は無く、ロシア政策に特に定見があるとも思われず、今回の事件を契機に新たに対露政策の方向を決める可能性はあります。

 前例としては、デタント一点張りだったカーター・ブレジンスキー政権が、ソ連のアフガン侵入後180度変わって、対ソ強硬姿勢に転じたことです。

 もっとも、それがアジアでも、軍事力の誇示に対する反発という形で、対中政策に表れるかというと、キッシンジャーの反ソのための対中接近の例もあり、即断はできません。

 ただ、ロシアに限っては、この解説どおり、今後オバマ政権がかなり強硬となることは予想し得ます。一つは、シリアの汚名挽回であり、また、長期的にも、シェールガスの開発に伴って、エネルギー問題、ひいては、経済面においてはロシア恐れるに足らずと考えている可能性はあります。つまり、対ロシア強硬策は米国にとってコストが安いと言えるのでしょう。

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