2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年5月26日

 浦弁護士は、この程度の活動で政治犯となることなど、通常は考えられないと見ている。譚作人は艾未未と同様、四川大地震に関する調査を行っており、環境問題に関する調査活動も当局の怒りを買っていた。裁判で浦志強は、四川大地震の調査に関して艾未未に譚作人の証人となるよう依頼し、艾未未は快諾したが、裁判所は艾未未の出廷を認めなかった。

 譚作人の裁判で、浦弁護士は譚作人が天安門事件について書いた『広場日記』が問題にあたるのであれば、そこに記されている内容が事実かどうかを検証すべきだとして、事件当時首相だった李鵬、北京市長の陳希同、国務院スポークスマンの袁木、戒厳部隊スポークスマンの張工などを証人として出廷するよう要求した。これほど大胆な弁護士は、世界中を探してもそうはいないだろう。

芸術家・艾未未の代理人も務める

 この2年後の2011年4月、艾未未は出張のため出国手続きをしている際に、譚作人と同じように突然連れ去られ、家族に居場所も知らされないまま、81日間拘禁されることになった。後日、北京市税務局は、艾未未の妻が代表を務める会社に1522元(約1億9000万円)の脱税容疑がかかっていることを伝えた。

 艾未未は釈放された後、浦弁護士を代理人に立て、巨額の追徴期支払い命令を不服とする行政訴訟を起こした。予想通り、この裁判で艾未未が勝訴することはなかったが、浦弁護士は「負けたとは考えていない」と言う。訴えを起こすことで、多くの人の関心を呼ぶことができたからだ。

 艾未未は、行政不服審査の前に2億円もの担保を払わなければならなかった。芸術家として成功し、経済力のある艾未未でも、短期間にこれだけの現金を用意することは不可能に近かった。すると、3万人以上のネットユーザーが寄付や貸し付けを申し出、あっという間に必要な金額が集まった。寄付を受けると違法集金にあたる可能性があったため、艾未未は金を借りる形を取り、後日、自らデザインした「草泥馬」(ネットユーザーが政府批判の風刺に用いる架空の動物)の切手を貼った借用書を支援者に送った。

法学教育に毒されず「偽物の弁護士」に

 浦志強は法律事務所の共同経営者の1人であり、ビジネス関連の訴訟で稼ぎ、そこから社会的な訴訟にかかる費用を捻出している。「海外から活動費用をもらうこともないし、抑圧されている貧しい人たちに金を払ってもらうこともないよ」と常々、浦弁護士は言っていた。


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