曲がりやすいブラズーカ
フリーキック(FK)などのセットプレーや、コーナーキックなどボールにスピン(回転)をかけた時の曲がりやすさ、無回転キック時のぶれやすさはどうだろうか。
曲がりやすさに関係するのは、回転しながら動く物体にかかるマグヌス力。マグヌス力とはどういうものか。回転するボールの上と下では空気の流れる速度に違いが生じる。速い流れは空気を薄くし、圧力が低くなる。そうすると圧力の高い方から低い方へ力がかかる。これがマグヌス力だ。弾道の軌道を研究したマグヌス氏の名前にちなんでいる。
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図2で説明すると、ボールの下部は、ボールの回転と空気の流れが一致するため空気は滑らかに速く流れ、圧力は低くなる。上部は圧力が高いため、下向きのマグナス力を得る。これによってボールは下向きに落下する力を受け、予想より早く弧を描きながら落ちていく。
ブラズーカのマグヌス力はどうだろうか。山形大の瀬尾和哉教授は、回転するブラズーカ、ジャブラニなどの周囲の空気の流れを綿密に調べ、マグヌス力(係数)を計算した。
瀬尾教授によると、ブラズーカは、通過したボールが下向きに流れやすく、作用と反作用の関係で、ボールそのものには上向きのマグヌス力が働く。
一方で、ジャブラニは、ボールの背後の空気の流れは下向きにいくも、すぐに上向きに転じる。つまり渦を巻いているように乱れる。そのため、ボールはバックスピンがかかっているのに、下向きのマグヌス力が働く。
瀬尾教授は「ブラズーカは、つなぎ合わせたパネルの枚数は少ないが、その分、接合面の総延長はジャブラニより長く、溝も深い。これによって空気は、ボールの表面から離れにくく、下向きの流れを引き起こす。下向きに偏向するため、ボールはその逆の方向にマグナス力を受ける。つまり、スピンをかけるとジャブラニより曲がりやすい」と説明する。