低迷する全要素生産性
いままでの低成長や円高など厳しい経営環境の中で、日本企業は投資を最小限に絞ってきた。米国ほどにはIT革命が進展しておらず、IT関連産業に広がりがないことも、勢いソフトウェア投資などが相対的に少ないことにつながっている。
【図表4】主要国:全要素生産性(TFP)伸び率の推移
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しかし、理由はともあれ、日本経済の生産性(全要素生産性=TFP)の伸びは主要国の中で相対的に低迷している(図表4)。90年以降の累積の伸び率では、イギリスや米国に2割近くも引き離されている。
この要因は多岐にわたっていて、ソフトウェア投資の少なさといったことばかりに起因するものではない。しかし、経済成長のうち資本と労働以外の技術進歩や生産効率化などを示すTFPが長期間低迷しつづけていることは、日本経済の構造改革どころか企業の価値を高める経営もなかなかできていないことを示している。
とりわけ、日本経済のTFPの推移を製造業・非製造業別に見てみると、非製造業のあまりの生産性上昇の低さに愕然となる(図表5)。いくら近年の日本経済が「失われた20年」の中にあったとしても、TFPの成長への寄与度がこの20年ほど一貫してゼロ%前後ないしはマイナスで推移している状況は、非製造業が全体として抜本的な規制緩和等の構造改革と経営刷新が不可欠となっていることを示している。
製造業も安閑とはしていられない。モノづくりで新興国に追い上げられている中、TFPもはかばかしく向上しないようだと、工業化が急速に進む新興国にはますます追い付かれてしまう。一方、付加価値の高い産業構造や企業経営への転換が進む欧米には追いつけない。