2025年12月17日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年10月20日

ビザを取得した中国人の実情

 悪用の事例として挙げられるのはペーパーカンパニーの存在だ。同じ住所のビルに多数の企業が登記しているなど、実際はそこで事業が行われているわけではないという不可解なケースが発覚し、メディアで報道された。また、企業は確かに設立されているものの、経営者は不在で経営にもほとんどタッチしていないといった例があることもわかった。

 筆者の知人の中にも、ビザ取得後、すぐに中国に戻り、ほとんど日本に来ないケースが複数あり、その人たちはたいてい日本語が不自由だ。中国のSNS、「小紅書」(REDNOTE)などで「経営管理ビザの取得方法」について仲介業者などから情報を入手し「とりあえず赤字にさえならなければ、日本のビザを維持できる」と安易に考えている人も多い。

 同ビザを取得した経営者がどのような事業を行っているかといった内訳はデータがないので不明だが、中国人に聞いてみると、貿易、物流、運送、飲食(中華料理店、カフェ、レストラン)、マッサージや整体店、ネイルショップ、民泊、不動産賃貸などが比較的多いという。

 彼らは日本の事情に疎いため、日本語ができる在日中国人と組んでビジネスを行うことも多い。店舗の場合、表向きは「中国系」であることを隠すことが多いので、一見するとわかりにくいが、東京や大阪には、彼らが経営する「隠れ中国系の店」がじわじわと増えている。

「日本に移住したい」中国人

 だが、今回の省令改正により、今後、経営管理ビザを取得することはかなり厳しくなりそうだ。制度として、すでに同ビザを取得している人の更新は、3年間の猶予期間が設けられた。28年10月16日の更新期間までは、新しい基準を満たしていなくても、すぐに不許可になることはないようだ。

 現在の経営状態や、今後、新しい基準を満たせる見込みがあるかどうかが更新のポイントになる。すでにビザを取得した人の関心事は、更新するか、あるいは他の在留資格を検討するかという方に移っている。

 もし本気で事業をやっていない経営者ならば、ビザの更新は難しくなるだろう。また、新しく申請する場合、富裕層にとって3000万円の資本金は問題ない金額で、事業計画書も専門家の助けを借りれば可能だとしても、日本語能力の点はクリアするのが難しくなる。

 そもそも、経営管理ビザは、日本で事業を行う人のための在留資格なので、これらの条件は以前からきちんと制度設計しておくべきだったという声もある。遅ればせながら厳格化したことによって、悪用する人は減少するだろう。

 しかし、「どんな小さな情報でもある」と言われる中国のソーシャルメディア「小紅書」で「改正された法律を上手にくぐり抜ける方法」が近いうちに紹介される可能性は高く、制度を厳しくしたとしても、いたちごっこになるかもしれない。

 そもそも、同ビザを使うことによって「日本移住したい」という中国人が増えたのはコロナ禍の最中の22年頃からだ。10年前の「爆買い」ブーム頃から右肩上がりで増え始めていたものの、切実にそれを願う人が急増したのは、中国側の事情が大きい。


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