2025年12月7日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年10月20日

 背景にあるのは、厳しすぎたゼロコロナ政策や情報統制、景気の悪化、病気や老後に対する不安、子どもの教育に対する不安、財産を分散化させたいなど、さまざまな理由だ。しかし、日本に移住するためのビザは存在しないため、同ビザを取得すること=日本移住の近道だと多くの人が考え、殺到した。

 その結果、もともと経営者ではなく、経営の経験がまったくない会社員までもが取得することができ、日本に移住している。筆者の知人は「家の近所に経営管理ビザで来日した中国人がラーメン店を開いた。妻は元看護師で、夫は元会社員という中間層だ。彼らに聞くと、全財産をつぎ込んで来日。日本で何をやって食っていこうかと相談した結果、妻は料理が得意なのでラーメン店にしよう、ということになったそうだ。子どもは日本の中学に入学でき、大喜びしている。有名進学校ではなく普通の中学だが、日本でのびのびと暮らせるだけでありがたいと言っていた」と話す。

前向きに受け止める声も

 このように、経営者ではない中国人も日本に続々と移住していたことは確かだ。たとえ経営の経験がゼロであっても、日本で事業を興し、まっとうに生活しようと努力していたり、日本語を一生懸命勉強し、日本社会に適応しようとしたりしている移住者もいる。

 一部の人がビザを悪用した結果、今回のような省令改正に至ったというわけだ。ごく一部の人のせいで全体に悪影響が及ぶというのは中国社会ではよくあることだが、そうしたことが日本の中でも起き始めている。

 今回の問題について、在日中国人社会では前向きに受け止める人も少なくない。「大勢の中国人が日本に押し寄せてくることにより、一定数、悪さをする人も一緒に来てしまう。それが事件化するたびに、まじめに生きてきた私たちも同じように白い目で見られてきた。ビザの悪用をする人を水際で日本政府が止めてくれるなら、ありがたい」という声だ。

 今回の省令改正によって、どれくらいその効果が出てくるかは現時点でまだわからないが、少なくとも、不正の抑止になったことは確かだといえる。

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