2011年3月の東京電力福島第一原発事故の後、東電と原発に関する厳しい意見が相次いだ。中には、感情的な意見もあった。中小企業を支える金融機関のトップが出版した本の中で、「東京電力は犯罪者」と述べた。
東京電力とは誰を指すのだろうか。従業員の子弟が学校でいじめに遭ったとの報告もあったが、いじめを助長するような書きぶりと言ってもいいだろう。
同じ経営者は、原発不要論を強調するあまり、「日本には黒いダイヤ石炭があるから大丈夫。二酸化炭素は温暖化を引き起こしていない」と珍説も披歴していた。
黒いダイヤは1960年代の話だ。採炭条件が悪化し閉山した日本の炭鉱の再開はありえない。一度でも坑内を見たことがあれば分かる。
温暖化の原因には、都市化、水蒸気の影響などもあるが、二酸化炭素も影響を与えていると考えられる。反原発のあまりの勇み足だ。
あれから15年近く経った。事故を起こした福島第一原発の炉の型式は沸騰水型(BWR)だったが、異なる型式の加圧水型(PWR)を中心に再稼働が進んだ。再稼働している原子炉は14基、約1330万キロワット(kW)だ。
BWRでも東北電力女川原発2号機と中国電力島根2号機が再稼働した。しかし、世界最大規模の柏崎・刈羽原発では度重なる不祥事もあり、再稼働が遅れた。
福島第一原発の事故後、原発の段階的縮小を目指すとしていた政府は、最大限の活用に方針を変えた。背景の一つはデータセンターを中心にした電力需要の増加だ。
生成AIを支えるデータセンターの建設は先進国を中心に世界中で拡大し、先進国で伸び悩んでいた電力需要は一転増加に転じている。
多くの国は、安定的な電力供給を支える原発の活用に乗り出している。日本も例外ではないが、賛否が拮抗する中での、新潟県の花角英世知事の柏崎刈羽6号機の再稼働容認は、マスメディアが大きく取り上げることになった。
事故を起こした東電の柏崎刈羽の再稼働をどう考えれば良いのだろうか。
