2025年12月14日(日)

World Energy Watch

2025年11月27日

 検討のシナリオをまとめて表-1にしたが、原発が3200万kW稼働している前提でも、需要が1兆1000億kWhまで伸びれば発電設備は大きく不足し停電危機に陥る。

 電力供給が見込めない国、地域にはデータセンターも半導体工場もできない。日本経済のけん引役と期待される生成AI、半導体には潤沢な電力供給が必須だ。

 米国も中国も発電設備を総動員し生成AIを支える構えだが、日本も同様の状況にあるのは明らかである。

 原発の再稼働がなければ、経済成長は覚束ないし、世界の中で生成AIも使えない国として取り残される。柏崎刈羽6号機の再稼働が必要とされる事情だ。

信頼感の醸成が何より必要

 現在日本には、既存炉が33基、合計設備容量約3300万kWある。建設中が大間など3基、合計414万kWあるが、最長60年間の運転期間を考えると廃止される設備も出てくるので、40年には約3500万kWの設備が稼働していると想定される。

 いまの原発設備を全て活用しなければ、40年度の電力需要を賄えない可能性が高いのは明らかだ。需要増に備えては、建て替え、新設も急がれる。

 安全が確認され、地元理解が得られた原発の稼働を進めることが必要だが、東電柏崎刈羽については、他の原発と異なる点がある。東電が運転する原発という点もあるが、地元の東電への信頼感が完全に醸成されているとは言い難い面がある。

 筆者は、時々柏崎で講演する機会がある。講演終了後地元住民から非公式に1対1で質問を受けることもあるが、その時に「東電は信用できますか」あるいは「東電以外の電力会社が運転することはできないかのですか」と質問されることがある。他の立地点では受けたことがない質問だ。

 地元住民は、他人のID(身分証明書)で管理区域に立ち行ったり、持ち出し禁止書類を持ち出したりする、規則・規律をないがしろにする行為が続くことに嫌気がさしていた。

 原子力発電の電気がなければ、安定供給も安価な電気も実現はできない。再稼働が経済成長にも必要とされる中で、規律、規則を軽視し、安全をないがしろにする姿勢は許されない。

 原発再稼働の必要性は国民も理解しつつある。問題はその運用を東電に任せていいのか、という国民の信頼だ。再稼働が日本経済の成長を支えることを東電社員が理解しているのではあれば、再稼働に水を差すような一連の不祥事を起こすようなことはないのではないか。責任ある運用を間違いなくしてくれることをいち消費者としても求めていきたい。

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