2025年12月14日(日)

World Energy Watch

2025年11月27日

 需要増を支えるのは、データセンターへの電力供給だ。世界のデータセンター能力の半分強を持つ米国の需要が先駆けているが、生成AIの広がりは多くの国で電力需要を増やす。欧州でも大きな需要増が想定されている(図-3)。

 加えて、最近導入スピードが落ちているとはいえ、電気自動車(EV)の導入、電化の進展が電力需要をさらに増加させる。

 11年に6000億kWhを超えていたドイツの電力需要も、コロナ禍、ウクライナ戦争の影響を受け、波を打ちながら減少し24年の需要は5000億kWhまで落ち込んだが、これから増加に転じ、政府は30年には6000億kWhから7000億kWhに達すると予測している。

 ドイツは、脱原発と共に、石炭火力発電所の段階的な閉鎖も温暖化対策として進めてきたが、減少する需要が発電設備の廃止を容易にした。これから増える需要を支える設備はあるのだろうか。

 BDEWは、30年の発電に占める再生可能エネルギーの比率を24年の63%から80%にする政府の目標は達成可能とみるが、ピーク時の需要を満たす十分な発電設備を国内で用意することは困難だろうとみている。

 電気は貯めるコストが高いので、ある時点の需要を満たす発電量がないと停電する。天候次第の太陽光、風力設備では需要に応じた発電ができず、供給が不足する可能性がある。

 ドイツが、安定的な供給電源として期待するのは、フランス、ポーランドなどの原発だ。特に最大の輸入相手国フランスからは、24年に200億kWh以上の供給を受けている。原発3基分の発電量だ。ドイツからの輸出量はわずか5億kWhだ。

 欧州の多くの国が進める原発の建て替えと新設がこれからの電力需要増を支えることになる。

 では、日本の電力需要と供給はどうなるのだろうか。

発電設備が不足する日本

 日本政府が今年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、電力需要減が想定されていた前回第6次の見通しから一転40年度の需要増が想定された。

 23年度9854億kWhの電力供給量は、40年度1兆1000億から1兆2000億kWhと想定されている(図-4)。40年度の需要量の想定は9000億から1兆1000億kWhだ。

 その大きな理由は、やはりデータセンターだ。一方日本では16年の電力市場自由化の影響で採算が取れない火力発電所の休廃止が続いている。

 増える需要を満たす設備は十分だろうか。検討の結果、不足し停電する可能性が指摘されている。

 電力広域的運営推進機関が、25年7月にいくつかのシナリオに分けた40年と50年の電力需給の検討の結果を公表したが、第7次エネルギー基本計画で想定する40年度の需要量1兆1000億kWhのケースでは、発電設備が1300万kWから4600万kW不足する。


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