ロシア・モスクワでの科学者らとの会合に出席した際のウラジーミル・プーチン大統領(11月28日)
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は4日、ロシアの領土だと主張するウクライナ東部ドンバス地方について、ウクライナ軍が撤退しないなら、ロシアが同地域を掌握することになると、再び警告した。また、ウクライナでの戦争終結に関するいかなる妥協案も拒否するとした。
「我々が武力でこの領土を解放するか、ウクライナ軍が撤退するかのどちらかだ」と、プーチン氏はインド紙インディア・トゥデイに語った。ロシアは現在、ドンバス地方の約85%を支配下に置いている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアに領土を割譲するつもりはないとの立場を堅持している。
ウクライナでの戦争終結をめぐっては、ロシアの首都モスクワで2日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領らとアメリカの交渉担当者らが協議。その際にアメリカ
交渉団は、プーチン氏が戦争を終わらせたがっているという印象を受けたのだと、ドナルド・トランプ米大統領は述べていた。
モスクワでの協議に臨んだアメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使は、4日に米フロリダ州マイアミで、ウクライナ側と協議する予定。
トランプ氏は2日の米ロ協議について「そこそこうまくいった」としつつ、今後どうなるかを語るには時期尚早だと発言。「タンゴは2人で踊るもの」なのでと、付け加えた。
アメリカが提案したウクライナの和平案は当初、ウクライナがドンバス地方で今も支配する地域を手放し、事実上、ロシアの支配下に置くという内容だった。しかし、ウィトコフ特使率いる米交渉団がモスクワで提示した和平案には修正が加えられていた。
プーチン氏は国賓としてインド・デリーを訪問するのを前に、インディア・トゥデイのインタビューに応じた。その中で、ウィトコフ氏や、トランプ氏の義理の息子ジャレッド・クシュナー氏らとの米ロ協議の前、新たな和平案の内容は目にしていなかったと述べた。
「だから我々は一つ一つを確認する必要があった。とても時間がかかったのは、それが理由だ」と、プーチン氏は述べた。
プーチン氏はまた、ロシア政府はアメリカの和平案の一部には同意していないとした。
「我々は折に触れて、これについては協議は可能だが、同意はできないと伝えてきた」
プーチン氏は、交渉が行き詰まっている原因について具体的に述べなかった。しかし、ロシアとウクライナの間には少なくとも二つの主要な争点が残っている。ロシア軍に占領されたウクライナ領土の運命と、ウクライナに対する安全の保証だ。
ロシアのユーリ・ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)は米ロ協議の直後に、戦争終結について「妥協点はなかった」と述べていた。
ウシャコフ氏はまた、ロシア軍が最近戦場で成功を収めたことで、交渉におけるロシアの立場が強化されたことをほのめかした。
一方でウクライナは、ロシアが停戦に合意するのを先延ばしにし、ウクライナの領土をさらに奪おうとしていると、繰り返し非難している。
ウクライナのアンドリー・シビハ外相は、2日の米ロ協議について、プーチン氏は「世界の時間を無駄にしている」と述べた。
ウクライナはかねてから、どのような合意においてもウクライナへの確かな安全の保証が必要だと訴えてきた。
ゼレンスキー氏は3日、ソーシャルメディアに声明文と動画を投稿。「今まさに、世界はこの戦争を終わらせる現実的な機会が訪れているとはっきり感じている」とした。
ただし、交渉については、「ロシアに圧力をかけて後押しされる」必要があると付け加えた。
ウクライナや欧州の同盟国は、ロシアが意図的に停戦合意を遅らせていると非難している。
ゼレンスキー氏は先週、アメリカとウクライナの代表団が先月23日にスイス・ジュネーヴで協議した結果、当初ロシア寄りの内容とみなされていたアメリカ案に、いくつかの重要な修正を加えることができたと述べていた。
アメリカとウクライナは先月23日の共同声明で、「更新され整理された和平の枠組み」を策定したとしたが、詳細は明らかにしなかった。
欧州の主要な交渉担当者らもジュネーヴに滞在し、ウクライナやアメリカと個別に協議した。
欧州指導者、アメリカによる交渉を懸念か
こうした中、ドイツ誌シュピーゲルのウェブサイトは4日、欧州の指導者たちがアメリカによる交渉に懸念を示す内容の電話協議の機密記録を入手したと報じた。
1日に行われた電話協議の英語記録によると、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「アメリカは安全の保証が不明確なまま、領土問題に関してウクライナを裏切る可能性がある」と述べたとされる。
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、ゼレンスキー氏は「今後数日間、細心の注意を払わねばならない」と警告したとされる。
メルツ氏は、「彼らはあなたとも我々とも駆け引きをしている」とも述べたと報じられている。
フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領も、「ウクライナとゼレンスキー氏と彼らだけに(自分たちが同席しない状態に)してはならない」と述べたとされる。
BBCはこの記録の内容を確認していない。
シュピーゲルの報道について問い合わせたところ、フランス大統領府(エリゼ宮)は、「大統領はそのような表現はしていない」と回答した。大統領府は機密事項だということを理由にマクロン氏の発言について詳細は明らかにしなかった。
フィンランドのストゥブ大統領は、シュピーゲルへのコメントを拒否した。メルツ独首相もこの問題についてコメントしていない。
ホワイトハウスはBBC宛ての声明で、「(マルコ)ルビオ国務長官、ウィトコフ特使、クシュナー氏、そして大統領の国家安全保障チーム全体が、ロシアとウクライナの間の殺戮(さつりく)を止めるために休むことなく取り組んでいる」と述べた。
「彼らは生産的な協議を行い、持続可能で強制力のある和平を促進できる計画について双方からの意見を集めている」と、声明には書かれている。
2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始したロシアは現在、ウクライナ領土の約20%を支配下に置いている。
激しい戦闘で犠牲者が出ていると報じられる中、ロシア軍はここ数週間、ウクライナ南東部で徐々に前進している。
(英語記事 Putin says Russia will take Donbas by force or Ukraine's troops will withdraw)
