今年2月にドローン攻撃で損傷したチョルノービリ原発の外部シェルター
ウクライナのチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所で、今年2月のドローン攻撃で破損した外部シェルターが、放射性物質を封じ込める主目的をもはや果たせなくなっているという。国際原子力機関(IAEA)が5日、明らかにした。
1986年の原発事故後に建設された巨大な外部シェルターについて、IAEAの査察団は、ドローン攻撃のため「(放射性物質の)封じ込めを含む、主要な安全機能を失っている」と確認した。
IAEAによると、ドローン攻撃で「深刻な損傷」を受けた現場について、査察団による安全評価が11月下旬に完了した。2月の攻撃は、鋼鉄構造の外装に火災を引き起こしたという。
ウクライナは今年2月、ロシアがチョルノービリ原発を標的に攻撃したと主張した。ロシアはこれを否定した。
査察団は加えて、外部シェルターの耐荷構造や監視システムに恒久的な損傷はなく、屋根を部分的に修理したと述べた。
しかしIAEAのラファエル・グロッシ事務局長は「これ以上の劣化を防ぎ、長期的な原子力安全を確保するためには、迅速かつ包括的な修復が不可欠だ」と主張した。
これについて英ポーツマス大学のジム・スミス教授(環境科学)はBBCに、「パニックになるようなことではない」と話した。
チョルノービリ事故の影響を研究してきたスミス教授は、原発の現場で最も危険なのは、放射性粉じんが飛散することだと説明。しかし、粉じんは厚いコンクリート製の「石棺」に封じ込められており、外部シェルターはその上を覆っている状態のため、「リスクは低い」と教授は話した。
1986年のチョルノービリ原発爆発は放射性物質を空中に放出し、欧州全体で公衆衛生上の緊急事態を引き起こした。これに対応して、旧ソ連は原子炉の上に石棺を建設した。
石棺の耐用年数は30年に限られることから、次の100年間にわたり放射性物質の漏出を防ぐため、外部シールドで覆う必要があった。
IAEAは12月初めから、ロシアの攻撃を受け続けるウクライナのエネルギーインフラを精査している。チョルノービリの査察に加え、原子力の安全とセキュリティーに関連する変電所も点検している。
グロッシ事務局長は変電所について、「すべての原子力発電所が炉の冷却やその他の安全システムに必要とする電力を供給するために、絶対不可欠だ」と説明した。「また、発電所が生産する電力を家庭や産業に分配するためにも必要だ」と付け加えた。
こうしたなか、ロシアは7日朝にかけて夜通し、ウクライナ中部の主要工業都市クレメンチュクを空爆した。
(英語記事 Chernobyl radiation shield 'lost safety function' after drone strike, UN watchdog says)
