2025年12月11日(木)

BBC News

2025年12月11日

ロンドンで8日に会談した(左から)イギリスのキア・スターマー首相、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、その後も協議を続けている

ヤロスラフ・ルコフ記者、クリス・メイソン政治編集長

英仏独の3首脳は10日、ウクライナでの戦争をめぐり、ドナルド・トランプ米大統領と共同で電話で協議した。終了後には、戦争終結に向けたアメリカ主導の計画について、今後数日は「集中的な取り組み」が続くと語った。

イギリスのキア・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、「ウクライナとその国民、そしてユーロ大西洋地域全体で共有する安全保障にとって、これは重要な局面だと合意した」と述べた。一方のトランプ氏は、「ウクライナについてかなり強い言葉で議論した」と述べ、「人々に関してちょっとした争いがあった」と認めた。

トランプ氏は9日に公開された米政治専門サイト・ポリティコのインタビューで、欧州の首脳たちを「弱い」と批判するとともに、アメリカによるウクライナ支援を縮小する可能性を示していた

インタビューではまた、ウクライナが選挙の実施を避けるために「戦争を利用している」と、トランプ氏は主張した。

これについて同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、選挙の「準備はできている」と反応。アメリカなどの支援で安全が確保されるなら、選挙は60~90日以内に実施できるとした。

ウクライナに対するロシアの全面侵攻は、同国のウラジーミル・プーチン大統領が2022年2月に開始した。ロシア軍は現在、ウクライナ領土の約20%を支配している。

「強い言葉」が使われたと

英仏独の3首脳は10日、トランプ氏との電話会談の直後、同一の声明を発表。「首脳らは進行中のアメリカ主導の和平交渉の最新状況について議論し、ウクライナに公正で持続的な平和をもたらし、殺戮(さつりく)を終わらせるための取り組みを歓迎した」とした。

一方で、「和平計画に関する集中的な作業は続いており、今後数日間も続く」とした。

約45分間の電話会談は、アメリカ側の働きかけで行われた。

関係筋は、「合意に向けて少しずつ前進している」と述べているが、合意に至るまでの複雑さも強調している。

争点となっているのはウクライナの領土問題で、ウクライナが領土とみなす土地を放棄することが現実的、あるいは妥当かという点だ。

イギリスは長らく、ウクライナに関する決定はウクライナ自身が下さなければならないという方針を取ってきた。これは、欧州各国がアメリカに対して主張している論点でもある。

ヨーロッパは一方で、トランプ氏の戦争終結への取り組みを、公的にも一般の目に触れない場面でも称賛している。

イギリスのジョナサン・パウエル氏を含む欧州各国の国家安全保障担当補佐官らは、ウクライナ当局者と定期的に会合を開いている。こうしたやりとりの概要は、同盟関係にある国々を通じてアメリカと共有されている。

合意に達する可能性があるとなれば、アメリカがロシアとの協議を主導するとみられている。

10日のホワイトハウスでの記者会見で、トランプ氏は電話会談で「強い言葉」が使われたことを認めた。

また、今週末にアメリカとウクライナを交えて会合を開くという欧州側の提案に同意するか、まだ決めていないと述べた。

「時間を無駄にしたくない」と、トランプ氏は語った。

一方でトランプ氏は、ゼレンスキー氏に「現実的になる」よう求め、ウクライナ国民は「合意を望んでいる。(中略)戦争が終わるのを見たいのだ」と述べた。

ゼレンスキー氏はこの日、戦争を終わらせる方法を示した20項目の文書を「近い将来」、トランプ氏のチームやヨーロッパのパートナーとの「共同作業の後」に、アメリカに提出すると、ソーシャルメディアに投稿した。計画については、それ以上の詳細を明らかにしなかった。

11月にメディアに広く流出したアメリカの和平案は当初、28項目で構成され、ロシア寄りの内容だと見られていた。ウクライナはその後、領土問題や安全保障の保証など、いくつかの重要な条項を変更するため、アメリカとヨーロッパの交渉担当者と個別に協議を行っている。

ゼレンスキー氏は、戦争終結のための和平合意に応じるよう、トランプ氏から圧力をかけられている。トランプ氏はウクライナに、領土をロシアに割譲することで事態を動かすよう求めている。

ゼレンスキー氏はこれを繰り返し拒否し、代わりに広大な前線での即時停戦と、将来の合意でウクライナに鉄壁の安全保障を保証するよう求めている。

先週末のウクライナとアメリカの集中協議では、ウクライナ側が合意できるような条件には到達できなかった。

ロシアによる将来の攻撃にウクライナがさらされる可能性がある合意を、アメリカ側が支持するのを阻止するため、ゼレンスキー氏は現在、ヨーロッパの支援国に働きかけている。

一方のロシアは、ロシアがこの戦争に勝利し、ウクライナが領土を引き渡す必要があるなどとしたトランプ氏の「非常に重要な」発言が、ロシアの見解と一致していると述べた。

ドミトリー・ぺスコフ大統領報道官は、「北大西洋条約機構(NATO)加盟の問題、領土の問題、ウクライナが土地を失っている問題など、多くの点で我々の理解と調和している」と語った。

プーチン大統領は先週、ウクライナ軍が東部ドンバス地方から完全に撤退しなければ、ロシアが武力で奪取すると警告を繰り返し、戦争終結方法に関するいかなる妥協も拒否した。

ロシア軍はここ数週間、激しい戦闘による多数の死傷者が報告されているにもかかわらず、ウクライナ南東部で緩やかな前進を続けている。

(英語記事 Intensive work continuing on Ukraine plan, European leaders say after Trump call

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cn5l162v419o


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