米司法省が19日に公表した「エプスティーン資料」をロイター通信が印刷して並べた
米司法省は19日、性犯罪で有罪とされたジェフリー・エプスティーン元被告（故人）に関連する捜査資料など関連文書を公開した。同省に開示を義務付ける法律が11月に成立し、同法が定める公開期限が12月19日だった。捜査に関する写真や音声、聴取記録を含む数十万点が明らかにされたが、その多くは黒塗りされたり、すでに公表されたりしたものだった。かつて元被告と交流のあったドナルド・トランプ米大統領への言及は少なかった。他方、歌手の故マイケル・ジャクソン氏や英王室のアンドリュー・マウントバッテン＝ウィンザー氏、ビル・クリントン元米大統領など、著名人の写真や、元被告の邸宅などの写真が、複数公開された。
トッド・ブランチ司法副長官は、捜査資料は1200人以上の被害者や親族を特定しているため、その身元が明らかになる情報は非公開にしたと説明している。
連邦議会への書簡でブランチ副長官は、今日の公開は完全ではなく、公開前にまだ確認すべき文書が残っていると述べ、「資料の量と、法律に基づきすべての文書のすべてのページを編集の可能性について確認する必要があるため、一部の資料の最終確認は続いている」と書いている。
野党・民主党は、今回の司法省による公開は、トランプ大統領が先月署名した「エプスティーン・ファイル透明化法」の規定に違反するものだと批判。トランプ政権が引き続き、元被告の被害者救済よりも、「トランプ大統領を守ろうとする行動パターン」を繰り返していると主張した。
下院監視委員会の民主党筆頭委員、ロバート・ガルシア下院議員は、「いま目にしているのは透明性ではない。成立した法律が定めるのは、こういうことではない」と批判した。ガルシア議員はこれまで、司法省資料とは別に、監視委の権限でエプスティーン遺産管理団体から召喚したさまざまな資料を次々と公開する民主党側の動きの先頭に立ってきた。
ホワイトハウスのアビゲイル・ジャクソン報道官は、トランプ政権は「歴史上最も透明性の高い」政権だと述べた。
連邦議会は11月、司法省にエプスティーン元被告関連の捜査資料を文書を公開するよう命じる法案を可決。自分の支持基盤から再三の圧力を受けたトランプ氏は、法案を11月19日に署名・成立させている。法律は、司法省に対し、元被告に関する捜査で得たすべての情報を30日以内に「検索とダウンロードが可能な形式で」公開するよう命じるもので、その期限が12月19日だった。
エプスティーン元被告は2008年、未成年者に性行為を勧めたとして有罪とされ、性犯罪者として登録された。2019年7月に未成年者の性的人身取引の罪で起訴され、その翌月、裁判を待つ間にニューヨークの拘置所内で死亡した。
14歳少女をトランプ氏に紹介か
司法省が公開した2020年の裁判資料によると、エプスティーン元被告は1990年代にトランプ氏に14歳の少女を紹介したとされている。
トランプ氏のフロリダ州の私邸マール・ア・ラーゴでの出来事で、エプスティーン元被告はその場でトランプ氏をひじで突き、少女について「これはいいだろう？」と「冗談めかして」尋ねたという。
2020年に元被告の遺産管理団体と元被告の共犯ギレイン・マックスウェル受刑者を相手取って提起された訴訟によると、トランプ氏は笑顔でうなずき、同意したとされている。
書類には「二人とも笑った」と記されている。後に匿名で訴訟の原告となった少女は、これを不快に感じたが「当時は、なぜなのか理解するには若すぎた」としている。
被害者は、エプスティーン元被告によって長年にわたりグルーミング（性的目的で相手を手なずける行為）を受け、虐待されたと主張している。
裁判資料によると、原告はトランプ氏による被害は訴えていない。これまで、元被告の他の被害者も、トランプ氏による被害を主張していない。
トランプ氏はかつてエプスティーン氏と長年にわたり友人同士だったが、元被告が初めて逮捕された数年前、2004年頃に仲違いしたと語っている。トランプ氏はエプスティーン元被告に関連する不正行為を一貫して否定している。
BBCはコメントを求めてホワイトハウスに連絡した。
トランプ大統領は19日夜にホワイトハウスからノースカロライナ州へ向かい、支持者集会に出席した。大統領は、エプスティーン資料の公表についてコメントしていない。
英王室のアンドリュー氏
公開されたファイルの中の写真には、かねて元被告との関係が問題になっている英王室のアンドリュー・マウントバッテン＝ウィンザー氏が写っているものも含まれた。
画像には、顔が黒塗りされた5人の膝の上に、タキシード姿のアンドリュー氏が笑顔で横たわり、それを後ろから、マクスウェル受刑者が笑顔で眺めている様子が写っている。
アンドリュー氏は、エプスティーン元被告に関連するすべての不正行為を繰り返し否定し、「彼の逮捕と有罪判決につながったような行為を見たことも、目撃したことも、疑ったこともない」と述べている。
クリントン氏の写真も
ほかに公表された中には、エプスティーン元被告が故マイケル・ジャクソンさんやロックスターのミック・ジャガーさんと写った写真や、クリントン元米大統領と写った複数の写真が含まれる。
クリントン氏は、元被告の共犯者ギレイン・マックスウェル受刑者と別の人物（顔は黒塗り）と室内のプールでくつろいでいる様子の写真も公開された。温水浴槽と思われるものに入り、頭の後ろに手を組んでいる写真も含まれている。
司法省が公開した写真に写っていること自体は、不正行為の証拠ではない。写真に登場する多くの男性は、自分は元被告の違法行為に関与していないと述べている。
クリントン氏の報道官は司法省の資料公開について、「彼らが20年以上前の粗い写真をいくら公開しようと構わないが、この問題はビル・クリントン氏に関するものではない。これまでも、これからもそうだ」とソーシャルメディアに書いた。
「ここには2種類の人間がいる。第1のグループは何も知らず、エプスティーンの犯罪が明るみに出る前に関係を断った人々。第2のグループは、その後も彼との関係を続けた人々だ。私たちは第1のグループだ。第2のグループの人たちがいくら遅延工作をしても、それは変わらない」と、アンヘル・ウレーニャ氏は書き、「誰もが、特にMAGAは、替え玉ではなく答えを求めている」と述べた。
MAGAはトランプ氏の選挙スローガン「アメリカを再び偉大にしよう」の意味だが、最近ではその支持者を表す呼称として使われている。さらに、その多くが大統領選の最中からエプスティーン資料の公表を求め、公表に消極的なトランプ氏を強く批判するに至った。
クリントン氏は、元被告が初めて逮捕されるより前の、1990年代から2000年代初頭にかけて、元被告と何度か写真に写っている。クリントン氏は元被告による虐待の被害者から不正行為を告発されたことはなく、性犯罪についても知らなかったとしている。
（英語記事 Thousands of Epstein files released including photos of Clinton, Andrew and Michael Jackson）
