行政組織もミスをすることがある。不祥事をなかったことにして隠すのか、それとも誤りを認めて事実を公表して改善に取り組むのか――。
ひとりの国民、あるいは市民という立場からみれば、後者が望ましいのは言うまでもない。しかし、どうすれば健全な行政運営を実現できるのか。これに応えるのはなかなかに難題である。
最高裁の生活保護引き下げ「違法」判決を受けて、厚生労働省は被害回復と再発防止を同時に進める局面に入った。一方、地方自治体でも生活保護制度の改善に向けた動きがある。
新潟県南魚沼市は、生活保護費の算定誤りを自ら検出し、過少支給分の追加支給に踏み切った。さらに、事実経過も含めて記者発表に踏み切った。
なぜ見直しに至り、どのようなプロセスで再検証を行い、利用者・市民・メディアはどう受け止めたのか。国の監査方針転換や各地の事例を俯瞰しながら、地方自治体の「権利保障」への実務的な挑戦を描く。
揺れる生活保護行政
前々回の記事「〈徹底解説〉生活保護引き下げ「違法」判決の厚労省対応、繰り返される“減額”と欠落した検証」では、生活保護費の引き下げ判決を受けた厚生労働省の動きを解説した。前回の記事「「賞味期限切れ」食品を生活保護申請者らに支給した徳島市の対応は「何が」問題だったのか?現場のジレンマと今回の事例から学ぶべきこと」では、賞味期限切れの備蓄食品を配布した徳島市の例から自治体の現場対応の難しさを伝えた。
物価高騰の中で国民の多くが今後の生活に不安を感じている。生活保護制度を身近に感じる人が増えているからこそ、賛否両論が巻き起こるのも当然といえよう。
こうした情勢下で、国や自治体は今まで以上に、市民の心に寄り添った行政運営が求められる。他方で、市民の側も、表面的な事象だけをとらえて批判や揶揄をするだけでなく、よりよい行政運営とは何かを考えていく必要がある。
そのための検討材料として、ある自治体の不祥事に対する対応をご紹介したい。新潟県南部にある「南魚沼市」という小さな自治体である。
