誤りが少数でも公表すべきだ
「私たちは、早い段階で『誤りが少数でも公表すべきだ』という方針を固めていました。組織内部の事前調整では『わざわざ公表することはないのでは』という声があったことも事実です。しかし、不利益を被った市民がいるのは事実です。注意喚起の意味も込めて公表することにしました」
透明性の確保と、他の自治体にも共有される教訓の提示を優先した。そう語るのは、今回の検証作業と公表に関わった南魚沼市福祉課長の高野正秀氏(55歳)である。
「大阪府堺市の報道を受けて、庁内でも問題意識の共有からはじめました。25年の8月から10月にかけて、全数調査を行いました。障害者手帳や年金、自立支援医療などの対象者のリストと照合し、一件ずつ確認作業を行っていきました。
堺市の報道と昨年3月末の国のマニュアルの改正を受けて、一度検証作業を行いました。しかし、その時は家族介護料加算の考え方の理解が浅く、見つけられませんでした。その後、外部の専門家を招いた研修で家族介護料加算の考え方を学んだことが本格的検証につながりました」
一口に障害者加算といっても、認定の根拠となる資料は、障害サービス、年金、医療と他分野にまたがる。障害者を専門とする職員との連携も不可欠である。
「南魚沼市では福祉課の中に障害サービスの担当者もいます。生活保護の業務経験もあるので連携はスムーズでした。知能指数(IQ)など障害分野の専門知識が必要となる判断では、個々のケースを一緒に検討しました」
手続きはすべてが終わってから一斉に行うのではなく、誤りが見つかれば、すぐに対応していった。「何を根拠にどう判断したのか」といった手続きは組織内で共有し、ルールの再徹底と運用の標準化を図った。
利用者、市長、議会、メディア、それぞれの反応
「誤りが見つかった5件のご家庭には、私と査察指導員またはケースワーカーの組み合わせで訪問し、説明とお詫びをして、いつまでに振り込むかを伝えました」
高野氏によれば、反応は総じて前向きだったという。不祥事では課長などの責任者ではなく、中間管理職が対応することが多い中で、異例ともいえる対応である。現場としては心強かっただろう。
「厳しい反応をする人は一人もいませんでした。知らなかった加算について驚き、喜ばれるケースが多かったです。最高額は90万円ほどで、涙ながらに喜ばれた方もいました」
障害のある子どもの進学費用に悩む世帯からの「助かった」という声も届いた。
対応経過は、逐一、市長や福祉保健部長(福祉事務所長)に報告して判断を仰いだ。事実を公表する際も、反対はなかったという。むしろ、「間違いは間違いとして、きちんと説明したほうがよい」と言われた。
厳しい指摘がなかったわけではない。議会からは、辛辣な意見もあった。それでも、公表に踏み切ったことに後悔はないという。
「リリースに対して、新潟日報と読売新聞から取材を受けました。新潟日報は若い記者が1時間半ほど取材に来て、構造的な問題にも関心を寄せてくれました」
報道では短く触れられただけだった。それでも、「興味関心をもっていただけることはありがたかった」と高野氏は語る。
