南魚沼市が選んだ『隠さない』という決断
南魚沼市は11月19日、生活保護費の算定誤りにより一部の生活保護利用者に過少支給が生じていたと公表した。対象は最大5年間で5世帯、追加支給は合計約246万円(市公表)で、誤りは家族介護料加算と障害者加算に関する国の算定指針の解釈ミスに起因すると説明した。市福祉課は「関係法令の確認を組織全体で行い、判断が難しいものは指導機関に相談することを徹底する」と再発防止の方針を示した。
市の不祥事は、読売新聞の地方版と新潟日報が小さく報道しただけだった。ウェブでは新潟日報の記事を読むことができる(新潟日報、2025年11月19日)。
筆者がこのケースに注目するのは、理由がある。南魚沼市の事例は、厚労省のように最高裁判決を受けてのものではない。徳島市のように報道機関からの指摘を受けたものでもない。南魚沼市が誰かに指摘を受ける前に自身で検証を行い、誤りを発見して被害者への救済を行い、再発防止策も含めて公表に踏み切ったケースだからである。
筆者の見立てでは、同様の問題は全国の自治体で生じており、南魚沼市の対応は全国の先駆けとなる可能性がある。詳しく解説していこう。
厚労省の歴史的転換に現場はどう動いたか
2025年度の福祉事務所長向けの会議で、厚労省は「権利侵害の防止」を第一に掲げる歴史的な方針転換を行った。不正受給対策などの適正実施よりも優先順位をあげたのは、人権侵害を容認する自治体の出現や、”役所の常識”にNoを突き付けた行政訴訟での敗訴がある。詳細は過去の記事を参照されたい。
・厚生労働省による生活保護監査の大転換、きっかけとなった2つの事件-福祉事務所による“人権侵害”)
・〈支給されなかった障害者加算〉一つの判決が覆した生活保護に関する“役所の常識”、「申請なければ支給しない」がまかり通る世界を変える
生活保護制度は、基本的には全国どこでも同じルールで運用されている。一つの自治体での不祥事や司法判断は、他の自治体にも影響を与える。制度全体の運営に責任をもつ厚労省も第三者ではいられない。
自治体のレベルでも、司法判断を受けた自己点検の動きがある。その中で、保護費の算定誤りが発覚する。ミスが発覚した時に、どう対応するのか。初期対応や説明責任(アカウンタビリティ)などの危機管理を怠れば、手痛いしっぺ返しを食らう。
京都市は南魚沼市と同様に支給漏れがあることを把握していたが、「国の基準が曖昧だった」として公表を見送っていた。そのことが京都新聞の調査報道で明らかになり、不祥事を公表しなかったこと自体が批判されることになった(京都新聞「生活保護世帯への「家族介護料」、京都市が39世帯に支給漏れ 「国の基準が曖昧」事案公表せず」、2025年8月21日)。
