ロシアのドローンによる夜間攻撃を受けた現場で対応する消防士(16日、ウクライナ・オデーサ州)
ロシアが、ウクライナ南部オデーサ州への攻撃を激化させている。ロシアの攻撃は同州の広範囲で停電を引き起こし、海上インフラを脅かしている。
ウクライナのオレクシー・クレバ副首相は、ロシアがオデーサ州に対して「体系的」な攻撃を行っていると述べた。クレバ氏は先週、ウクライナでの戦争の焦点が「オデーサへ移った可能性がある」と警告していた。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、繰り返される攻撃は、ウクライナの海上物流へのアクセスを遮断しようとするロシア政府の試みだと述べた。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は今月上旬、黒海でロシアの「影の艦隊」のタンカーがドローン攻撃を受けたことへの報復として、ウクライナの海上アクセスを断つと脅していた。
「影の艦隊」とは、ウクライナ全面侵攻後に西側諸国がロシアに科した制裁を回避するためにロシアが使用している、数百隻のタンカーを指す言葉。
オデーサ州では22日夜、港湾インフラが攻撃され、民間の船舶が損傷したと、州知事が明らかにした。
数百回におよぶロシアの一連の攻撃で、同州では数日間にわたり電力供給が混乱したほか、複数の死傷者が出ている。
21日夜の攻撃では約12万人が停電に見舞われた。また、主要な港で火災が発生し、小麦粉や植物油を積んだ数十のコンテナが焼失した。
オデーサ東部では先週、ピウデンニ港への弾道ミサイル攻撃で8人が死亡し、少なくとも30人が負傷した。
先週初めには、3人の子どもと車で移動していた女性が攻撃で死亡。ウクライナとモルドヴァを結ぶオデーサ州唯一の橋が一時的に遮断された。
こうした中、ウクライナ空軍のドミトロ・カルペンコ司令官が先週末に解任された。オデーサ州の新たな空軍司令官は間もなく選任されると、ゼレンスキー氏は示唆している。
オデーサ州の港は常に、ウクライナ経済の要となってきた。オデーサ市はキーウ、ハルキウに次ぐ国内第3の都市であり、ザポリッジャ、ヘルソン、ミコライウ各州の港がロシアに占領されて使用できない現状では、戦略的に重要な地域になっている。
ウクライナは戦時下であるにもかかわらず、依然として世界有数の小麦やトウモロコシの輸出国だ。
2023年8月以降、オデーサ州は穀物を輸送する重要な回廊の起点となっており、ルーマニアとブルガリアの沿岸部を通じてトルコへと向かうルートが確保されている。
ゼレンスキー大統領は、「ロシアへの圧力がなければ、(ロシアには)本気で侵略を終わらせるつもりがないということを、誰もが理解すべきだ」と述べた。ゼレンスキー氏は以前、ロシアがオデーサの人々に「混乱をまき散らしている」と非難していた。
このコメントは、アメリカ主導の最新の外交協議が米フロリダ州マイアミで終了したタイミングで出された。アメリカはウクライナとロシアの代表団それぞれと協議し、楽観的な声明を出した。しかし、4年近く続くロシアによるウクライナでの戦争を終わらせるための明確な進展は見られなかった。
アメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使はマイアミでの協議で、ウクライナが今月提示した20項目からなる和平案について、ウクライナの首席交渉官ルステム・ウメロフ氏と「立場の調整」に取り組んだと述べた。このウクライナ案は、11月にアメリカが提示した案の代替案。アメリカの初期の案はロシア寄りだとみられていた。
ロシアのキリル・ドミトリエフ特使がフロリダからモスクワに戻る前に、クレムリン(ロシア大統領府)のユーリ・ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)は、ヨーロッパとウクライナによる和平案の修正は、和平実現の可能性を高めないと述べた。
ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は22日、欧州連合(EU)諸国には、ウクライナをめぐるロシアとアメリカの合意を妨害し、「ロシアとアメリカの関係改善を阻止」するという「確固たる願望」があると非難した。
また、欧州諸国がロシアの攻撃に対して「狂気じみた恐怖」に取りつかれているとした。ロシアはEUや北大西洋条約機構(NATO)を攻撃する意図がないことを法的文書で確認する用意があるとも述べ、プーチン氏の過去の主張を繰り返した。
「我々は(ヨーロッパへの攻撃を)計画したことは一度もない。しかし彼らが、我々からそれ(計画)について聞きたいというのなら、そうしよう。文書にしよう」と、プーチン氏は11月に述べていた。
(英語記事 Russia escalates attacks on key Ukrainian region of Odesa)
