2026年1月5日(月)

BBC News

2026年1月4日

ドナルド・トランプ米大統領は3日、南米ヴェネズエラの首都カラカスを同日未明に攻撃し、ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を拘束して米ニューヨークへ移送したことについて、米フロリダ州の私邸マール・ア・ラーゴで記者会見し、ヴェネズエラで「適切な政権移行」ができるまで「今後は我々が運営する」と言明した。会見では、マドゥロ政権による麻薬密輸がアメリカ国民に危害を加えていたという持説を繰り返したほか、ヴェネズエラの石油備蓄開発について、今後はアメリカの石油会社が同国に入ると話した。

マドゥロ大統領夫妻を乗せたとみられる米軍機は現地時間3日夕、ニューヨーク州の空軍州兵基地に到着。マドゥロ氏と見られる灰色のジャージ姿の人物を大勢の当局者が機外へ連行する様子が見られた。

さらにその後には、マドゥロ夫妻を乗せたとみられるヘリコプターが計3機、ニューヨーク・マンハッタンに到着。夫妻は車で、ニューヨーク市内の麻薬取締局事務所へと移送され収監手続きを受けた後、ニューヨーク・ブルックリンにある拘置施設へ移送された。

3日朝にはパム・ボンディ米司法長官が、マドゥロ大統領を「麻薬テロの陰謀、コカイン輸入の陰謀、機関銃および破壊的装置の所持、アメリカに対して機関銃および破壊的装置を所持する陰謀」の罪状で、ニューヨーク州南部地区の連邦地裁において起訴したと明らかにしていた。大統領夫人の罪状は明らかにしなかった。

他方、カラカスではヴェネズエラの最高裁が3日、副大統領のデルシー・ロドリゲス氏が当面、暫定大統領となるべきだとの判断を示した。ロイター通信によると最高裁は、ロドリゲス副大統領が暫定大統領になることが「行政の連続性と、国の包括的な防衛を保証する」ために重要だとしている。

これに先立ちトランプ氏は記者会見で、今後のヴェネズエラの指導者は副大統領のデルシー・ロドリゲス氏だと述べた。

しかし、ロドリゲス氏はその後、国営テレビで演説し、ヴェネズエラの唯一の大統領はマドゥロ氏だと強調。「ヴェネズエラにはただ一人の大統領がいる。その名はニコラス・マドゥロだ」と述べていた。

ロドリゲス副大統領は国民への演説で「我が国への武力侵攻」を非難し、「私たちのヴェネズエラ、私たちの国民の皆さん。ここには明確な政府があります」と強調した。また、ヴェネズエラは法律とお互いへの敬意に基づいた対話は受け入れる用意があるとも述べていた。

こうした事態に国連安全保障理事会は同日、ヴェネズエラでのアメリカの作戦について、5日に緊急会合を開くと発表した。コロンビアが会合を要求し、常任理事国のロシアと中国が同意した。

トランプ氏、マドゥロ氏は独裁者と

トランプ氏はマール・ア・ラーゴでピート・ヘグセス国防長官、マルコ・ルビオ国務長官、ダン・ケイン統合参謀本部議長らと共に記者会見に臨んだ。大統領は、米軍がカラカス中心部の「守りを強固に固めたされた軍事要塞」に対して行動し、マドゥロ氏を「裁きにかける」ために連れ出したと話し、「世界のどの国も、アメリカが昨日達成したことを成し遂げることはできない」と強調した。

また、ヴェネズエラ軍は「我々を待ち構え」「多くの艦船を展開していた」が、その攻撃はすべて米軍の攻撃で「無力化され」たとし、この作戦で米兵の犠牲者はなく、装備も失われなかったと述べた。さらに、作戦中にカラカスの明かりが消えたのは「アメリカが持つ専門技術」によるものだと付け加えた。

トランプ氏は、必要となれば「2度目の、さらに大規模な」攻撃を行う準備ができていると述べ、当初は「第2波」が必要になると想定して準備していたものの、今回の攻撃の成功を踏まえると、2度目はおそらく必要ないだろうと述べた。

そのうえで、マドゥロ大統領夫妻は「今やアメリカの司法に直面している」として、アメリカとその市民に対する「致命的な麻薬テロ作戦」を理由にニューヨーク南部地区で起訴されたと、トランプ氏は述べた。

トランプ氏は、「海路で入ってくる麻薬の97%を(米軍が)撃退した」と述べ、麻薬船1隻が運ぶ麻薬で平均2万5000人が死に至っていると主張。そうした麻薬の大半はヴェネズエラから来ていると強調した。BBCはこれらの数字を確認していない。

トランプ氏はヴェネズエラの石油についても言及。ヴェネズエラの石油事業は「失敗」しているため、アメリカの大手石油企業がヴェネズエラに入り、インフラを修復し、「この国のために金を稼ぎ始める」と主張した。ヴェネズエラの石油埋蔵量は世界最大と言われる。

トランプ氏は、アメリカとの「パートナーシップ」がヴェネズエラ国民を「豊かで、独立し、安全」にし、アメリカに住むヴェネズエラ人は「非常に幸せになる」、「もう苦しんだりしない」と主張した。

そのうえで、ヴェネズエラの統治について「安全で適切、賢明な(政権)移行ができるようになるまで、我々が国を運営する」と述べた。

トランプ氏は、マドゥロ氏を「正統性のない独裁者」と呼び、アメリカに「膨大な量の致命的な違法薬物」を持ち込んだ責任があると主張。マドゥロ氏が麻薬密輸組織のカルテル・デ・ロス・ソレスを監督していたと非難した。

マドゥロ氏は以前、自分はカルテルの指導者ではないと強く否定していた。

今後は誰がヴェネズエラを統治するのかと記者団に質問されると、トランプ氏は自分とルビオ長官を手で指し示し、「当面は、私の背後に立っている人々が主に担うことになる」と述べた。

昨年のノーベル平和賞受賞者でヴェズエラの野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏と連絡を取ったかどうか質問されると、トランプ氏は話していないと答え、マチャド氏がヴェネズエラの指導者になるのは「非常に難しいだろう」と付け加えた。

「とてもすてきな女性」だが、「国内で支持も尊敬もされていない」と、トランプ氏はマチャド氏について評した。

マドゥロ夫妻は「諦めた」と統合参謀本部議長

続いて登壇したケイン統合参謀本部議長は、「アブソリュート・リゾルブ(断固たる決意)」と名付けられた作戦について説明。兵士、船員、空軍兵、海兵隊員など、合同部隊の「すべての要素」が情報機関や法執行機関と「一体となって」活動する「精緻(せいち)」なものだったとして、「比類なき」情報能力と「テロリストを追跡する長年の経験」を活用したと付け加えた。

ケイン将軍によると、マドゥロ夫妻の「摘出」には、150機以上の航空機が適切な場所と時間に集結する必要があり、事前の準備では、マドゥロ氏の居住地や食事内容を含む詳細を把握するため、「数カ月間」の諜報活動を要したと説明した。

米軍はヴェネズエラの防空システムを解体・無力化し、「奇襲の要素を完全に維持した」ともケイン将軍は述べた。

米軍は米東部時間午前1時1分にマドゥロ氏の居住施設に到着し、周囲を封鎖。到着時に米軍ヘリコプターは「攻撃された」ものの」、「圧倒的な力」で応戦し、ヘリコプター1機が被弾したが、すべての米軍機は帰還できたという。

その後、マドゥロ夫妻は「諦め」て投降し、司法省によって拘束された後、米東部時間午前3時29分に米軍艦イオージマに乗艦したと、ケイン統合参謀本部議長は説明した。

「5000万ドルを節約」とルビオ長官

ルビオ国務長官は会見で、「マドゥロは正統な大統領ではない」と強調し、そう位置付けているのはトランプ政権だけでなく、バイデン前政権や欧州連合(EU)、世界中の多くの国も同じ意見だったと指摘した。

長官はさらに、ヴェネズエラ大統領は「アメリカの司法から逃げていた人物」で、米政府は5000万ドルの懸賞金をかけていたが、今回の拘束で「5000万ドルを節約できたようだ」と述べた。トランプ氏はそこで、「誰も請求してこないようにしないと」と付け足した。

ルビオ長官は続けて、マドゥロ氏には今回の事態を回避する「複数の機会」があったにもかかわらず、「野蛮人のように振る舞い」「ふざけていた」と述べた。

また、マドゥロ氏が「イランを自国に招き入れ」「アメリカにギャングを氾濫させる」ことにしたのだと非難した。

キューバ出身だという記者からの質問にトランプ氏は、「キューバについてもいずれ話し合うことになる」、「我々はキューバの人々を助けたいし、キューバから追われた人々も助けたい」と答えた。

両親がキューバ移民のルビオ氏は、「大統領が話す時には、その言葉を真剣に受け止めるべきだ」と付け足し、マドゥロ氏を守るために協力した護衛の多くがキューバ人だったと指摘。

「もし自分が今(キューバの首都)ハヴァナに住む政府関係者だったなら、少なくとも心配はしているはずだ」とルビオ氏は述べた。

ルビオ氏はこの記者会見の後、アメリカは今後数日間でヴェネズエラ政府の「行動と実績」に基づき今後の対応を決定すると、米紙ニューヨーク・タイムズに述べた。

これは、ヴェネズエラのロドリゲス副大統領が、アメリカと協力するつもりはないと主張した後の発言。

「(ヴェネズエラ国民は)自国に多大な貢献をするための独自で歴史的な機会を得ると我々は考えており、彼らがその機会を受け入れてくれることを望んでいる」とルビオ氏は述べた。

マムダニNY市長、作戦を批判

1日にニューヨーク市長に就任したばかりのゾーラン・マムダニ氏はソーシャルメディア「X」に投稿し、マドゥロ大統領夫妻の拘束について「ニューヨーク市で連邦政府が拘束する収監計画も含めて報告を受けた」と書いた。

マドゥロ夫妻は、ニューヨーク市ブルックリンにある連邦施設メトロポリタン拘置センターに移送されたと報じられている。

マムダニ氏は今回の作戦を批判し、「主権国家への一方的な攻撃は戦争行為であり、連邦法および国際法違反だ」と書いた。

「この露骨な政権交代の追求は、国外の人にだけ影響するのではなく、この街を故郷とする数万人のヴェネズエラ人を含むニューヨーカーに直接影響を与える」

中南米各国の首脳たちは

トランプ氏の会見に先立ち、ヴェネズエラのディオスダド・カベジョ内相は、市民に冷静を保ち、国家の指導部と軍を信頼するよう呼びかけた。ロイター通信によると、内相は「世界はこの攻撃について声を上げる必要がある」と述べた。

コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は、部隊がヴェネズエラ国境に展開されていると述べ、米州機構(OAS)と国連に「直ちに会合を開くよう」呼びかけた。

チリのガブリエル・ボリッチ大統領は、アメリカの軍事行動に対する「懸念と非難」を表明した。

キューバのミゲル・ディアスカネル大統領は、「アメリカによるヴェネズエラへの犯罪的攻撃に対し、国際社会の反応を緊急に要求し、非難する」と述べた。

長年ヴェネズエラとの領土紛争を抱えるガイアナのモハメド・イルファーン・アリ大統領は、「事態を注視している」と述べ、「安全保障計画に従って、治安部隊を全面動員している」と付け加えた。

トリニダード・トバゴのカムラ・パサード=ビセッサー首相は、「トリニダード・トバゴはヴェネズエラ国民との平和的関係を維持し続ける」と述べた。

ブラジルのルイス・イナシオ・「ルラ」・ダ・シルヴァ大統領は、アメリカの行動は「容認できない一線を越えた」もので、「ヴェネズエラの主権に対する極めて重大な侮辱だ」と批判。国際社会に「断固とした対応」を呼びかけた。

トランプと親しいアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、「麻薬テロリスト独裁者マドゥロの失脚を祝う」と述べた。新政府への移行をアルゼンチンとして支援する用意があるとし、「中途半端や曖昧な態度をとる余地はない。善の側にいるか、悪の側にいるかのどちらかだ」と述べた。

ウルグアイのジャマンドゥ・オルシ大統領は公式声明を発表し、事態を「注意深く、深刻な懸念をもって監視している」と述べ、「軍事介入を、これまでと同様に拒否する」と表明した。

スターマー英首相、マドゥロ氏のために「涙流さない」と

イギリスのキア・スターマー首相は今回の事態についてソーシャルメディア「X」で、「イギリスは長い間、ヴェネズエラでの政権移行を支持してきた。私たちは、マドゥロを正統でない大統領とみなしていたし、彼の独裁政権が終わることにいっさいの涙を流したりしない」と書いた。

さらに、「私は今朝、国際法への支持を改めて表明した。イギリス政府は、ヴェネズエラ国民の意思を反映する正統な政府への、安全で平和的な移行を求め、今後数日の間にアメリカ政府の関係者と進展する状況について協議していく」とも書いた。

これに先立ちスターマー首相は質問に答え、今回のアメリカの作戦に「我々は関与していない。それは完全にはっきりと言える」と述べていた。

EUの外相にあたるカヤ・カラス外務・安全保障政策上級代表もソーシャルメディアで、「私はマルコ・ルビオ米国務長官および駐カラカスのEU大使と話をした。EUはヴェネズエラの状況を注視している」と発言。「EUは繰り返し、マドゥロ氏には正統性が欠けていると述べ、平和的な政権移行の必要性を訴えてきた」とした。

一方で、「いかなる状況においても、国際法の原則と国連憲章は尊重されなくてはならない。我々は自制を求める」、「同国にいるEU市民の安全が私たちの最優先事項だ」と書いた。

フロリダのヴェネズエラ人は祝賀ムード

バーント・デブスマン・ジュニア記者(フロリダ州ドーラル)

ヴェネズエラから米フロリダ州南部へ移住した人たちの中心地、ドーラルで私は取材している。ここは親しみを込めて「ドーラルズエラ」と呼ばれている。

ここでの雰囲気は、熱狂的だとしか言いようがない。ヴェネズエラの旗とトランプ氏のサインを掲げた車列が、約2キロにわたり渋滞している。

ここにいる多くのヴェネズエラ人移住者は、マドゥロ氏に何の愛着も持っていない。中にはマドゥロ政権下、あるいは前任者ウゴ・チャヴェス政権下のヴェネズエラを逃れてきた人たちもいる。

祝賀の中心となっているのは「エル・アレパソ」という人気レストランで、ニュースを知った大勢が朝5時から集まっている。

ここには数百人が集まり、駐車場を探している人も大勢いる。クラクションが鳴り響き、音楽が大音量で流れ、人々が歓声を上げており、非常に騒がしい。

9年前からアメリカに住んでいるエルキンさんは昨夜遅く、ヴェネズエラにいる友人に起こされたと私に話した。その友人は、攻撃の情報がソーシャルメディアに流れる前にそれを知らせてきたという。

「これはドナルド・トランプなしでは起きなかった」と、エルキンさんはヴェネズエラ特有のスペイン語で語り、ヴェネズエラの旗を手に満面の笑みを浮かべていた。

エルキンさんは今のところ、政権移行や、アメリカがヴェネズエラを「運営する」というトランプ氏の発言を気にしていない。

「今重要なのは、彼ら(マドゥロ夫妻)が終わったということだ。彼らは戻ってこられない」、「それをやったのはトランプだ」と、エルキンさんは喜んだ。

同じくヴェネズエラ出身のロサンナ・マッテオさんは、2012年からアメリカに住んでいる。マドゥロ政権やその前のチャヴェス政権を倒す「能力」がアメリカにあることは知っていたが、まさか実現するとは思っていなかったと話した。

マッテオさんはこれまでしばしば、「マドゥロ打倒」を知る夢をよく見ていたと述べた。

「そして昨夜、夫が私を起こしてそれを知らせてくれた」

彼女は政権移行について心配していないが、一つだけトランプ政権には明確にしてもらいたいことがあると述べた。つまり今後、マドゥロ政権に関係してきた官僚がそのまま残るなら、多くのヴェネズエラ人が激怒するというのだ。

「私たちはそれを受け入れないし、望んでもいない」と彼女は付け加えた。

(英語記事 Captured Venezuelan leader Maduro arrives in New York after US strikes

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c20d6gw7d59o


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