インドはまた、海軍力を強化するため、ドイツからの潜水艦隊の購入も間近に迫っている。インド洋における中国海軍のプレゼンスが拡大する中、潜水艦はインドの海洋安全保障にとって不可欠である。
今回署名されたEUとの防衛合意は、領土保全からサイバー脅威に至る様々な脅威に対する防衛協力に焦点を当て、軍事装備品の購入に関する即時のコミットメントは含まれていない。しかし、これはインドが国家安全保障を確保するためにEUと連携することに関心と意欲を持っていることを示している。
トランプ政権が世界秩序にもたらしている多くの不確実性を考慮すると、インドと EU は共通の安全保障上の懸念について協力し、ある程度の安定を取り戻すことができるだろう。ただし、それはこの合意を具体化することに成功した場合に限る。
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一致したEUとインドの思惑
本論説は、EU・インド間で合意された「安全保障・防衛パートナーシップ」には海洋安全保障、テロ対策、サイバー防衛等、多くの協力分野が列挙されているが、核心部分の一つに、防衛装備品協力への期待があるとの考え方に立脚している。この見方に賛同する。
ロシアのウクライナ侵攻に起因する欧州安全保障環境の悪化と、米国による欧州安全保障へのコミットメントの低下に直面する欧州にとって、自前の防衛力強化が喫緊の課題となっている。そのためEUは昨年3月、EUの防衛産業と軍事力強化のため今後4年間で8000億ユーロを投入する方針を決定した。
ところが実際、今の欧州の生産能力では必要とされる防衛需要を賄いきれない。そこで巨大市場を有し、中国と対立して、ロシア依存からの脱却を目指すインドが、EUにとって都合の良いパートナーとして浮上した。
一方、防衛装備品の調達先の多様化を基本方針の一つとするインドは、これまでフランスや米国、イスラエル等からの調達比率を増やしていたが、トランプ政権になって米国からの調達には不確実性が増してきた。他方で、中国やパキスタンに対する抑止、繰り返し生じる紛争への対応等から、インドにとっては質量ともに防衛力の強化が至上命題となっている。そこでインドは欧州との交渉を加速させたのだが、そこには共同生産を通じての技術移転に対する期待もあった。
以上のような防衛装備品にかかるインドとEUの間の協力が真に実質的な進展を見るならば、インドの武器製造能力は大いに向上し、インド太平洋地域の戦略環境を変えていく可能性がある。特に、インドが航空機のエンジン技術、潜水艦関連の装備、電子戦等の関連技術を得ることができれば、中国との戦力差を縮めることに役立つ。
