スナックが提供してくれるもの
それだけではない。日本全国に何万軒と増殖したスナックが生き残る理由。それは人間が生きるうえで欠かせないものを供してくれるからだ。スナックは一見さんに扉を閉ざす。窓はなく、中はのぞけない。値段もメニューも外に書いてない。カウンターに座れるのは、「常連客」と一見さんであることを恐れない「スナックの勇者」だけ。
スナックとは徹底的に私的な空間だ。語られることは公にならない。カフェなどと異なる。公に開かれた瞬間、スナックはスナックでなくなる。だから「会員制」「一見さんお断り」なのだ。私的空間だからこそ、ひとは弱みをさらけ出し、心を裸にできる。マスターに愚痴り、ママに誘われてカラオケをがなる。人間は誰もが「弱い自分を受け入れてくれる場」を必要としている。それこそが、スナックに欠かせないメニューなのだ。
ひとはアルコールが入ると、体が溶け、液体となり、低きに流れる。ふらふらと、ゆらゆらと。
すると現れる、スナックが。入れば、あらゆる人間は弱きひとになる。勇気を持って、はじめての街のはじめてのスナックの扉をひとりで開いてみよう。瞬間、あなたは「スナックの勇者」となり、弱きひととして迎えてもらえる。
今回の30分の旅は、あとが長い。明日の仕事を忘れないように。
