2026年2月23日(月)

30分の旅

2026年2月23日

スナックが提供してくれるもの

 それだけではない。日本全国に何万軒と増殖したスナックが生き残る理由。それは人間が生きるうえで欠かせないものを供してくれるからだ。スナックは一見さんに扉を閉ざす。窓はなく、中はのぞけない。値段もメニューも外に書いてない。カウンターに座れるのは、「常連客」と一見さんであることを恐れない「スナックの勇者」だけ。

 スナックとは徹底的に私的な空間だ。語られることは公にならない。カフェなどと異なる。公に開かれた瞬間、スナックはスナックでなくなる。だから「会員制」「一見さんお断り」なのだ。私的空間だからこそ、ひとは弱みをさらけ出し、心を裸にできる。マスターに愚痴り、ママに誘われてカラオケをがなる。人間は誰もが「弱い自分を受け入れてくれる場」を必要としている。それこそが、スナックに欠かせないメニューなのだ。

 ひとはアルコールが入ると、体が溶け、液体となり、低きに流れる。ふらふらと、ゆらゆらと。

 すると現れる、スナックが。入れば、あらゆる人間は弱きひとになる。勇気を持って、はじめての街のはじめてのスナックの扉をひとりで開いてみよう。瞬間、あなたは「スナックの勇者」となり、弱きひととして迎えてもらえる。

 今回の30分の旅は、あとが長い。明日の仕事を忘れないように。

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Wedge 2026年3月号より
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ

「新しい戦前になるんじゃないですかね」─。今から4年前、テレビ朝日の『徹子の部屋』でタモリさんが口にした言葉だ。 どのような意図で発言したのかはわからない。ただ、コロナ禍だった当時、全体主義体制を称揚するような空気が漂い、議会制民主主義の危機も顕在化し、「1930年代」に時代が近づきつつあると感じていた私は、その言葉に妙な〝重み〟を覚えずにはいられなかった。 昨今の様々な出来事を見るにつけ、その感覚は確信へと変わった。時代は、当時の「戦間期」を思わせる局面に入り、大国指導者が世界の行方、人類の運命を左右する時代になったのである。このままでは、最悪の場合、第三次世界大戦が起こる可能性も否定できない。 ただ、もし戦争になったとしても、大国指導者たちが戦場に行くことはない。いつも犠牲になるのは、市井の人々である。 英国を代表する歴史家、A・J・Pテイラーは、『ウォー・ロード 戦争の指導者たち』(新評論)最終章で日本のことを取り上げ、こう指摘している。「日本は戦争の指導者はただの一人もいなかった」 つまり、指導者不在のまま、日中戦争、太平洋戦争へと突き進み、日本は破滅したのである。当時、大衆も熱狂し、政治はそれに流された面もある。 一度始まった戦争を終わらせることは容易ではない。それは4年が経過したロシア・ウクライナ戦争を見れば明らかである。動乱の時代、今こそ歴史に学び、教訓、希望を見出し、この危機から「脱出」する必要がある。


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