2026年5月2日(土)

Wedge REPORT

2026年5月2日

偽装留学生たちは責められない
でも残る、ラーメン店バイトでもとれてしまう「特定技能」ビザへの違和感

 残り半年間の日本語学校の学費、それに生活費も自分で稼がなければならない。タン君は学校の寮に引っ越した後、ラーメン店と宅配便の仕分け作業という2つのバイトをかけ持ち働き始めた。ラーメン店は週末の土曜と日曜に11時から15時まで、仕分け作業は22時から6時までの夜勤シフトに週3~4日入った。2つのバイトで、学費分を天引きされる前の販売所の給与とほぼ変わらない額が稼げた。

「仕分けの仕事も夜勤だけど、気持ちは楽でした。新聞配達をしていた時のように日本人から怒鳴られることもなかったので」

 就労時間は週28時間を超えた。希望する就職が決まっても就労ビザの申請時に入管当局に発覚すれば、申請が却下されかねない。そこでタン君は“抜け道”を使った。

 仕分け作業のバイトは人材派遣会社経由で決まっていた。バイト代は銀行口座に振り込まれず、会社から現金で手渡しされる。つまり、当局には違法就労がバレない。

 日本語学校の同級生には専門学校への進学を目指す者が多かった。大半は勉強そっちのけでバイト漬けの日々を送る“偽装留学生”だが、日本語能力を問われず、学費さえ払えば入学できる学校は簡単に見つかる。そして専門学校を卒業すれば、「高度人材」として日本で就職する道が開ける。しかし、タン君には進学の意思はなかった。

「僕が日本へ来たのは働くことが目的です。学費など払わず、できるだけ早く就職したかった」

 12月、タン君は「特定技能」という在留資格を取得するための試験を受けた。特定技能は外国人労働者の受け入れのため、19年に創設された資格だ。対象は「飲食料品製造業」や「ビルクリーニング」、「介護」など人手不足が深刻な16分野で、就労にはまず分野ごとの技能試験と日本語試験に合格し、就職先を探す必要がある。特定技能の資格で働く在日外国人は25年末時点で39万296人に達する。21年の5万人以下だったことを考えると猛烈な伸びである。

 タン君が受験したのは特定技能「外食業」の試験だ。そして今年2月、合格の知らせが届いた。彼の日本語は初歩レベルで、日本語能力試験も下から2番目の「N4」に合格している程度だ。ラーメン店でバイトしたとはいえ、外食業の専門知識があるわけでもない。特定技能の試験はそんな彼でも合格できるレベルなのだ。

 これで念願だった日本での就職が実現し、借金も返すことができる――。タン君は希望に胸をふくらませ、就職活動を始めた。しかし、なかなか就職先が見つからない。

 外食業では、接客などで他の職種以上に語学力が求められる。その点、タン君の日本語は接客に十分なレベルではない。加えて日本語学校の出席率もネックになった。特定技能の資格で留学生を採用する企業には、出席率で人材の素行を判断する傾向がある。タン君は新聞配達で疲れ果て、学校を休んだ日が少なくなかった。

 3月下旬には、さらに悪いニュースが飛び込んできた。入管庁が特定技能「外食業」での新規ビザ発給を停止するというのだ。

 特定技能は分野ごと受け入れ上限が定めてある。外食業の場合、29年3月までで5万人だ。それが今年2月末時点で約4・6万人に達し、遠からず上限に達する見込みとなった。そのため4月13日以降のビザ申請を受けつけないことが決まった。


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