2024年11月22日(金)

韓国の「読み方」

2014年8月1日

 こうした最先端技術を駆使した防衛システム構想が実現に向けて動き始める一方で、最近韓国軍内では、戦闘機に搭載されたミサイルが離陸時に落下したり、駆逐艦の電力が海上ですべて喪失し攻撃・自衛能力が無くなる等、現場部隊の装備不良、士気の低下が目立っている。軍事力の基本である兵力の確保も、急速に進む少子高齢化により難しくなってきている。次期中長期国防計画も現在の兵力水準は維持不可能という前提で練られているほどだ。

 また、6月21日に発生した韓国軍の最前線兵士による銃乱射事件も深刻である。事件を起こした兵士は普段から注意を要する「B級関心兵士」とされていたようだが、特別管理対象となる「A級関心兵士」とB級を合わせると全隊員の10%を占めているという。更に、兵役期間が以前に比べ短縮されたため兵力を補充する必要が増えているにも関わらず、近年は兵役に適応しない若者が増えているそうだ。

 それだけではない。韓国は自力による防衛能力向上を図ろうとしているが、一方で台頭する中国への配慮のためか、日米韓の軍事連携強化が進展する展望は一向に見えない。日米からの軍事技術・情報等の支援または協力なしに韓国は如何にして自前の防衛力を強化できるのだろう。甚だ疑問である。

 過去60年に渡って、韓国がソウルを中心に経済を発展させることが可能だったのは、北に対する抑止力がうまく機能していたからだ。その抑止力の主な構成要素は米韓同盟を基盤とした国防体制であったが、主敵とされた「北」への備えを求める国民の強い支持があったことも重要である。しかし、最近の東アジア地域情勢の変化に伴い、韓国では外交面で中国と接近する一方、内政面では国民から「安全」を求める声が高まるなど従来の対北朝鮮抑止力を重視する考えにも変化が見られるようになった。こうした韓国の変化は日本の安全保障にも大きな影響を与えるだろう。閣僚人事等内政面で苦労が絶えない朴槿恵政権は今後どのような舵を取るのか。韓国の将来を考える上では、対日、対中政策等外交面だけでなく、内政にも十分注目していく必要がある。


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