いつでも「正しい情報」とは限らない
個々のトレーナーの資質や制度だけでなく、私たちが普段接している健康・運動情報の受け取り方についても考えておきたい。たとえば、「筋力トレーニングは健康によい」という情報は、多くの場合妥当である。しかしそのことは、誰にとっても同じ負荷や同じ種目が適切であることを意味しない。
経験者向けの「追い込む」方法を初心者がそのまま真似れば、効果より先にけがのリスクが高まることは当然あるだろう。健康情報についても同様で、「糖質を減らせば痩せる」「このサプリを飲めば体が変わる」といった単純化されたメッセージも、個人の健康状態や生活習慣を無視すれば、かえって不調やリバウンドにつながることがある。
一方SNS上では、こうした情報の単純化が起こりやすい。短い動画や投稿では、複雑な条件や例外よりも、強い言い切り、劇的なビフォーアフター、わかりやすい成功体験の方が注目される。
実際、Pew Research Centerが2026年に公表した米国成人を対象とする調査では、成人の40%が健康・ウェルネス情報をSNSのインフルエンサーやポッドキャストから得たことがあると回答している 。自分の健康や生活を変えたいという動機だけでなく、たまたま目に入るという情報環境の影響も大きいようだ。
このように、健康・運動関連の情報においては、それ自体が完全に間違っている場合だけでなく、一部は正しいが条件が抜け落ちている場合にも注意が必要である。「筋トレはよい」「この運動で体が変わる」といった情報を読む際に必要なのは、どのような人を対象にし、どのような条件で成り立ち、どのような場合には避けるべきなのかを把握することである。
正しい情報でも使い方を誤れば危険になる。パーソナルな時代においては、「今の自分に使ってよいのか」「危険なサインが出たときに止められるのか」などの、利用者とトレーナー間での情報や意識の共有がますます重要になっていくように思われる。

