これまでと趣が変わったテーマ
ロシアによる全面的侵略開始以来の22年~25年の大使会議は、国際社会によるウクライナ連帯の構築、武器支援の獲得、対露制裁の強化、防空システムの強化、冬期のエネルギー支援の拡大、欧州連合(EU)加盟プロセスの促進等、その時々の喫緊の実務的テーマが議論された。
他方で、今年のテーマは、これまでと趣が違って、「平和の回復とウクライナのリーダーシップ」という抽象的なものであった。ウクライナ外務省幹部は、筆者の問いに対して、ウクライナは支援を与えられるだけの受け身の外交から、自らイニシャティブを発揮し、相手国と対等な立場で協力関係を構築する主体的で積極的な外交へシフトすべきであることが込められていると解説してくれた。
筆者なりに解釈すれば、このシフトの背景には、ウクライナが独自に開発・生産して、実戦に投入している中距離および長距離ドローン並びに巡行ミサイルの効果が戦況に有利に反映されて来ていること、ウクライナの粘り強い対米外交により米国のトランプ政権が再び停戦・和平外交に関与する姿勢を見せていること、ウクライナのEU加盟交渉が正式に開始されたこと等から生まれたウクライナの自信がある。
他の国・地域に関するゼレンスキー大統領の言及
ウクライナ大使会議における大統領演説の全文は、本論考を書いている現在も発表されていないが、ウクライナのメディアの断片的報道によれば、日本以外の国・地域に関して、以下の発言があった。
まず、米国の中間選挙、ドイツの地方選挙、フランスの大統領選挙等、ウクライナの主要パートナー国に関しては、各国の選挙を見据えて、ロシアの選挙介入の可能性に警鐘を鳴らすとともに、各国の市民社会、メディア、若者への働きかけを強化すること、そして、選挙結果の如何にかかわらず、ウクライナへの支援を維持・強化するように指示した。米、独、仏は、いずれもウクライナにとって極めて重要なパートナー国、軍事・経済支援の供与国である。各国の政府に加えて、国民一般に対する外交的働きかけも強化するよう大統領が指示したのは当然であろう。
ロシアからの脅威認識を強めている欧州に関しては、ウクライナが独自に開発している対弾道ミサイル防衛構想「フレイヤ」を欧州共通の防空システムに発展させるべく各国の協力を取り付けるように指示した。防衛協力が欧州からウクライナへの一方的な支援ではなくて、ウクライナも欧州全体の防衛に貢献できるというウクライナの自信を反映した指示であることは明白である。
中東・湾岸地域に関しては、イランからの空襲に対抗できるように迎撃ドローン・システムを迅速に供与した結果、ウクライナと地域の主要国との関係を大きく発展させた外交を賞賛している。因みに、ウクライナからのドローン・システムの供与を受けたサウジアラビア等は、ウクライナに対する財政支援等の供与に同意している。
