対日圧力を強めるロシア
今回のロシアによる一連の動きは、9月の国家院(下院)選挙を見据えた内政上のパフォーマンスという側面はあるだろう。しかし最も重要なのは、ロシアが外交・安全保障上の対日圧力を一段上げたこと、そして今のロシアは、中国との関係で、当面その旗を降ろすことはできないだろうということだ。
また、ウクライナ戦争に対するロシア国民の不満への対応もあるだろう。プーチンは7月から 8月、イルクーツク州、オムスク州、クラスノヤルスク地方、ブリヤート共和国、ノボシビルスク州、そして今回のサハリン州と、精力的に地方視察をしている。これらは、前回2021年の国家院選挙における与党「統一ロシア」の得票率が、ブリヤート共和国を除き、いずれも30%台に止まった地域だ。「統一ロシア」の得票率は全体で49.82%であったので、プーチンとしては何としても地方票のかさ上げをしたいところだろう。
プーチンにとり目下最大の課題である、ドンバスを含むウクライナの4州占領を完成させるためには、ミサイルやドローンだけでは不可能であり、どうしても兵員を増やさなければならない。そのためには、9月の国家院選挙を「プーチンの政党」の大勝利で終え、国威を発揚させ、兵員増の環境づくりをすることが必要だ。プーチンのサハリン州訪問並びに北方領土上陸は、このような「地方票固め」の一環として、「強いロシア」を牽引する大統領の「断固たる姿勢」を示したものであろう。
だが日本にとって最も重要なのは、プーチンが政治・安全保障上の対日圧力を一層強めたことだ。8月 12 日、プーチンは太平洋艦隊の演習視察時に行った演説で、その大部分を対日政策に費やした。その要点は、次の通りだ。
領土問題でロシアに妥協の余地はない。ロシアは日本の求めに応じ、平和条約締結に向けて対話を再開したが、後に日本が立場を変えた。責任は日本にある。日本はロシアに一方的制裁を科し、ロシアを「主要な脅威」の一つと位置付けた。よってロシアは太平洋艦隊を含む軍事力を強化する。欧州連合(EU) によるロシア船舶の拿捕に対抗し、ロシアは「あらゆる場所で」対抗措置をとる。ただロシアは日本を含む近隣諸国と協力の用意がある。
要するにプーチンとしては、領土で譲歩する意志は全くないことを明らかにした上で、対日関係は「日本の責任」によって悪化し、かつ日本はロシアを「脅威」と位置付けているので、関係改善を望むのであれば日本が譲歩せよということだ。その「譲歩」とは、直接的には制裁の緩和だと思われる。
