中でも大きな影響を与えたのが、4月の陸軍制服組トップのジョージ陸軍参謀総長の事実上の解任であったとされる。この解任には様々の要因が指摘されているが、その一つはジョージが多様性を推進していたことにあるとされる。多様性・公平性・包摂性(DEI)を唾棄するヘグセスには許せなかったのであろう。
ジョージとドリスコルとは関係が近く、2人は強固な信頼関係で結ばれていたため、ジョージの解任は、ドリスコルが辞任に傾くのに大きな役割を果たしたと考えられている。ジョージの解任当初はドリスコルも、結局のところ大統領とヘグセスが、自分たちの望む人材を選ぶのでありそれが文民統制だ、と下院歳出委員会国防小委員会で証言して、政権の立場を擁護したが、そのころからいずれ衝突は避けられなくなることは見えていた。
陸軍だけではない、高官が次々と更迭
今回のドリスコルの辞任で、米軍の中でも最大規模の陸軍において、就任時に議会上院の承認を得た、文官と制服組の両方のトップが同時に不在となる異常事態が生じている。
ヘグセスによる解任の嵐に巻き込まれているのは陸軍だけではない。陸軍参謀総長が解任された4月に、フィラン海軍長官も退任に追い込まれている。そもそもヘグセスは、実際の長官の職務に就く前から、「新しい国防長官の下では、まず統合参謀本部議長を解任し、DEIや過激なリベラルに関与した将軍たちは全員排除しなければならない」と豪語していた。
ヘグセスは自分の言葉を実行に移し、まずアフリカ系の統合参謀本部議長を解任し、女性の海軍作戦部長や沿岸警備隊司令官も解任させた。また、より自由で攻撃的な交戦規定を実現するために、国際法などを厳格に適用しようとする軍の法務官も次々と解任していった。第二次トランプ政権下において、将官レベルだけでも、20人を超す人数が、解任されたり退役に追い込まれたりている。
現在はイランにおいて戦争が進行中である。長期的ビジョンのない戦争遂行で、現場は疲れ果てており、装備も不足がちである。そのような中、国防長官が陸軍長官らの意見を容れずに、高官を次々更迭していくことは、現場に負担を与えている。加えてそれらの将官の中には、ドリスコルが陸軍改革を進める上で、頼りにしている高官も含まれていた。
