次の選挙に出ないことを決めたため、翌年1月まで好きにトランプ政権批判や反対投票の出来る共和党議員は、「失うものはなにもない」、つまりトランプを恐れる必要はないのだ。今後、半年弱だが、人事の承認や緊急予算案の承認などで政権を悩ますことになりかねない。
政権内の力関係はどうなるか
今回の辞任劇で、注意しなければならないのは、ドリスコルがバイデン政権の忘れ形見ではなく、トランプ人事で採用された文官だという点である。これまでのブラウン統合参謀本部議長やジョージ陸軍参謀総長の解任は、トランプ政権に任命された文官であるヘグセス対制服組という形であったが、今回はトランプ政権よって選ばれた文官同士の対立である。
ドローンや超音速ミサイルによる軍の近代化を進める実務派ドリスコルと、DEI排除にこだわる忠誠心絶対派のヘグセスがぶつかり合って、実務派が敗れたと見ることもできる。政権終盤に向かって非合理な忠誠心絶対派が突き進むことになるかもしれない。また、実務派ドリスコルの陰にはバンスがおり、今後、バンス対ヘグセスの主導権争いが激化するきっかけとなるかもしれない。
今後の政権内の力関係を占うには、陸軍長官に、ドリスコル的な実務派が任命されるのか、それともヘグセス的忠誠心絶対派が指名されるのかがとりあえず注目のしどころだろう。ただ、世界をなにより驚かせたのは、戦争中のトランプ政権が国防政策を巡って統制の取れない混乱状態にある様子を見せつけたことである。
世界は、トランプがイランへの関心を失いつつある中、ホワイトハウスの機能不全とペンタゴンを揺るがす内紛という「米国内の底知れぬ混乱」が、前線の兵士や同盟国を置き去りにしたまま、中東の戦火を制御不能な領域へと押し流していくリスクを眺めているしかないのだろうか。
