注目すべきは、金融が単なる経済活動ではなく、抑止力自体の一部になりつつあることである。抑止力には、危機が発生した際に、必要な兵器や弾薬を継続的に生産し、損耗を補充できる「産業的持久力」が不可欠である。したがって、防衛産業の生産能力を金融面から強化することは、戦闘遂行能力のみならず、相手国に対して長期的な抵抗能力を顕示する戦略面の抑止力を示す。
DSRB構想のもたらす意義は大きい。現代の安全保障に関する国家間の競争は、兵器、技術、人的資源のみならず、資本市場、信用力、サプライチェーン、製造能力を含む総合的な競争へと変質している。
今後の防衛力整備については、「予算をどれだけ配分するか」だけでなく、「その資金をいかにして長期的・安定的に産業能力へ転換できるか」が決定的に重要となる。DSRBは、そのための新しい制度的枠組みを提供でき、「防衛分野の世界銀行」になる。したがって、その成否は、民主主義諸国が安全保障を「国家予算の問題」から「金融・産業・技術を統合した国家戦略」の課題へと再定義できるかにかかっている。
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防衛産業が持つ構造的課題
日本にとって、この課題は他人事ではない。防衛産業基盤の強化、装備品輸出の拡大、サプライチェーンの強靭化を進める上で、政府予算と民間金融をいかに結びつけるかは、今後急速に重要性を高める政策課題となる。
欧州も日本も防衛予算を拡大しているが、兵器・弾薬の生産能力は必ずしもそれに比例して増強されていない。特に中小企業や専門部品メーカーにとっては、長期的な設備投資を必要としているにもかかわらず、銀行・保険会社等の慎重姿勢や政府調達の予算単年度主義により、資金を安定的に確保しにくい。
防衛力は兵器の保有量のみならず、それを継続的に生産・補充できる「産業的持久力」にも依拠する。金融はもはや経済政策にとどまらず、国家の安全保障のための抑止力そのものを構成する戦略的要素となっている。
日本の防衛産業は高度な技術力を有してはいるが、市場規模の制約、長期的な需要予測の困難さ、企業の収益性、サプライチェーンの脆弱性等、多くの構造的課題を抱えている。防衛予算の増額だけでは国全体の産業を動員しての装備品の安定的供給確保という課題には十分に対応できない。ファイナンスが円滑になされるような制度設計が必要である。
