2026年9月14日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年9月14日

 2026年7月7日付ウォールストリート・ジャーナルは、「防衛分野のための世界銀行」の設立を提案するカナダや欧州北大西洋条約機構(NATO)諸国の構想を、安全保障の強化のための金融分野の重要性として紹介する記事を掲載している。

(Pavel_Chag/gettyimages)

 ロシアによるウクライナ侵攻や中国の軍事力増強を背景に、欧米諸国は戦後最大ともいえる防衛力の再構築を進めている。しかし、今日の安全保障上の課題は、単に政府が防衛予算を増額するだけでは解決できない。

 深刻な課題は、巨額の予算を、実際の工場、生産ライン、兵器、弾薬、サイバー能力等へ転換するための「金融インフラ」が十分に整備されていないことにある。この問題への新たな対応策として浮上しているのが、「防衛安全保障強化銀行(DSRB)」の構想である。

 この銀行の基本理念は、第2次世界大戦後の復興を支えた世界銀行等の国際開発金融機関のモデルを、防衛・安全保障分野に応用することにある。カナダ、ルクセンブルク、トルコ、ウクライナ等9カ国が中心となって、この構想を推進している。

 安全保障を大国のみに依存するのではなく、「中堅国」も金融の力を活用し、戦略的自律性を高めようとする試みである。この銀行の最大の推進者はカナダのカーニー首相である。

 元イングランド銀行総裁でもあった同氏は、地政学的な影響力を高めるために「中堅国」が結束することを強く提唱している。その背景には、既存の金融システムが防衛産業を十分に支援してこなかったという構造的問題への反省がある。

 DSRBは、「予算はあっても生産能力が増えない」という問題を、信用供与の側から解決しようとする構想だ。国家のソブリン信用力を基盤に高い格付けを獲得し、それを梃子として市場から低金利の資金を調達する。それにより、防衛装備関連企業への融資に対し保証を提供するとともに、国家安全保障上重要なプロジェクトへの直接融資を行う。

 こうした仕組みが機能するようになれば、防衛企業は政府予算の短期的変動に左右されずに長期資金を確保でき、工場建設、弾薬生産、サイバー防衛、重要インフラの確保等への投資を促進できる。


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