2026年9月14日(月)

スポーツ界の新潮流

2026年9月14日

 きたる9月19日~10月24日にかけて、第20回アジア競技大会・第5回アジアパラ競技大会が愛知県を中心に開催される。それぞれ43競技・18競技が実施され、45の国・地域から合わせて約2万人の選手が参加する。日本オリンピック委員会理事、アジア・アジアパラ大会アスリート委員長で、アテネ・北京五輪では「オール一本勝ち」で金メダルを獲得した柔道家の谷本歩実さんに話を聞いた。

「次の開催国のモデルになるような大会にしたい」と終始笑顔で語ってくれた谷本さん(WEDGE)

 アジア大会は、選手たちが世界を舞台に戦うための登竜門です。

 私自身、日の丸を背負う重みを初めて知ったのが、2002年のアジア大会(韓国・釜山)でした。競技関係者だけではなく、日本中の方が応援してくれます。アテネ五輪金メダリストの競泳・北島康介選手や、レスリング・伊調馨選手、吉田沙保里選手もみんな、同じアジア大会を契機に世界で活躍していった同世代のメンバーです。

 一方、今大会では、世界選手権などと時期が重なったためにあえて次世代の選手を出場させる競技もあります。まだ発掘されていない選手が活躍するような〝下剋上〟が観られるかもしれませんし、例えばeスポーツには11歳の選手も出場します。

 振り返れば、日本への招致が16年に決定して以降、コロナ禍による自粛期間や、総合競技大会に猜疑の目が向けられた時期もあり、一時は開催さえ危ぶまれました。

 今でこそ、ラッピング列車が走るなど大会に向けた機運は高まっていますが、文字通り「どん底」からのスタートでした。それでも必死に、学校訪問事業などを通じて地域に足を運び続け、多くの方の熱意と協力もあってここまでたどりつけました。

地域一丸となって
日本を変える「一歩」を!

 改めて感じるのは、地域の人たちの支えなくして総合競技大会は開催できないということです。

 例えば、ボランティアの方々。アジア大会では4万人が結集してくれます。かつて私が07年にブラジルの世界選手権で試合に負け、泣いていた時にも、話しかけてくれたのはボランティアの方でした。負けてしまった選手に話しかけるのは、関係が近いほど難しいんです。負けたショックで控室から出てこられなくなる選手も少なくない。私の師匠の古賀稔彦先生も、1988年のソウル五輪で負けた時には、「この窓から飛び降りた方が良いんじゃないか」と思うくらい追い込まれたと、そう何度も聞かされました。

 選手たちは皆、そういう思いで日の丸を背負っています。全てのアスリートの「挑戦する姿」に対して、勝ち負けに関係なく拍手を送ってあげてほしい。

 そして、この大会には大きな意義があります。人間関係が希薄になりつつある今、人と人とがつながりを持つ、感動を分かち合う─それが、社会に対するスポーツの価値であり、総合競技大会をやる意味なのだと私は信じているからです。日本が変わっていくための一歩を、昨年の大阪・関西万博に次いで愛知・名古屋から踏み出していきましょう。

 大会期間中は私も、一般ボランティアとして参加します。どの会場にいるかは内緒ですが、ぜひ、見かけたら声をかけてください!

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Wedge 2026年9月号より
日本スポーツ界の新潮流 変革の時をつかめ
日本スポーツ界の新潮流 変革の時をつかめ

大谷翔平、三笘薫、北口榛花、阿部詩、八村塁、松山英樹……。世界で活躍する日本人選手がここ最近、増え続けている。国内では、スポーツの力をまちづくりへ生かそうと、スポーツ界・民間・行政の連携も広がっているほか、新たな競技の普及も進んでいる。一方、少子化などの課題は競技人口にも影響を及ぼし始め、精神論や根性論など「昭和的価値観」の指導のあり方も見直され始めた。まさに、日本スポーツ界は変革の時を迎えている。新潮流を、日本社会へどう生かしていくか─。32年ぶりに日本でアジア大会が開催される今、その可能性を探りたい。


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