同盟関係を取引的・条件付き的関係に
筆者らも指摘する通り、米国の同盟相手諸国の側に米国との同盟を維持する経済的戦略的な実益がある以上、たとえ国家の誇りを一部損傷しても同盟関係の崩壊を押し留める制動は、効果的に働き続けてきた。米中対立が高まった過去10年余の期間は、中国からの脅威に対処する必要もあって、敢えて卑屈な姿勢の中にあっても合理を数えて納得してきた。
しかし、昨今この体制は変質を起こし始めている。従来の米国による同盟国への姿勢は、米国が安全保障上の主要な負担を担う一方で、同盟国に対しても応分の補完的役割と寄与を求めようとする「同胞的な」鷹揚さがあった。しかし、第2次トランプ政権は、米国の利益を最大にするのだと主張し、同盟関係を取引的・条件付き的関係に再定義しようとしている。
同盟諸国の側も、米国が同盟から得ている利益に言及することを遠慮しなくなってきた。欧州に展開する米軍は(日本や韓国の米軍も同様だが)、米国自身の世界的な軍事的影響力、情報収集能力、前方展開能力、そして中国やロシアなどへの抑止力を支えている。
同盟は米国自身の安全保障と国際的影響力を維持する役割でもあり、米国の同盟国への支出は「負担」だけではなく、「利益への対価支払い」でもあると主張する。欧州(及びカナダ)の同盟諸国は、米国の要求に無条件で従うことに躊躇を隠さなくなってきている。
欧州諸国のそうした動きの底辺には、欧州自身の脅威認識に生じつつある変化が感じられる。論文の筆者らは、「欧州はロシアのウクライナ侵攻を通じ、中国を単なる経済相手ではなくロシアを支える戦略的競争相手として認識する」という。
中露の脅威は依然として存在するが、欧州の戦略環境は明らかに変化している。世界は新たな対立の時代に戻りつつあるが、対立のフロントラインはもはや欧州大陸ではなく極東・西太平洋に移っている。
米国とその同盟諸国との関係の構造変化は、そうした世界の戦略環境の中での欧州諸国の利害評価を映し出していると思われる。

