2026年9月17日(木)

Wedge REPORT

2026年9月17日

高齢級材が枯渇し、木材価格が低迷

 国有林の森づくりは至って粗放だった。九州の民有林ではスギの造林が盛んで、しかも挿し木で増殖した苗木を植えていた。

 こうしたクローンの林は、当然樹形が揃っていて、それらが連続する姿は、実生苗のバラツキある樹型に慣れた筆者などには奇異に映った。筆者が初めての現場だった四国では、スギもヒノキも実生苗を使っていた。

 九州の篤林家たちは、クモトオシ(成長が早い)、ヤブクグリ(成長が遅い)などに代表されるいくつものスギの品種を植え分けて、独自の森林施業を集約的に行っていた。それに対して国有林では林冠が鬱閉(うっぺい・閉鎖して暗くなること)してからは、戦中戦後の人手不足も手伝って、ほとんど間伐や枝打などの手入れを行っていなかったようである。

 ところがこれが幸いして、高密度で育ったゆえに、成長が悪く=年輪緻密、自然落枝が多い=無節が多いなどの高品質材の要件を備えるに至ったのである。

無節材(筆者提供)

 そのため国有林の高齢級ヒノキ材が原木市場に出品されると、買い手の人気を集めて多くの製材屋が集まった。国有林のヒノキ丸太は引っ張りだこだった。

 この現象から見ると、当時の木材価格の高値は、高齢級材の品質の高さに負うところが大きかったのであろう。当然のことながら間もなく高齢級材が枯渇し、その後しばらくして登場した50年生程度の丸太では、藺草御殿に供するような高品質は到底望めない。

 高齢級材の枯渇によって、木材を賞翫(しょうがん)する建て主がいなくなり、目利きの製材屋も減った。木材価格の低迷は、品質の低下が招いた当然の結果なのである。

 主に行政の林業関係者の悪い癖は、木材を量で捉えて品質で見ていない。ものづくりの基本である品質を置き去りにして、数量ばかり追ったのでは、永遠に林業による利益の確保は有り得ないだろう。


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