2026年9月17日(木)

Wedge REPORT

2026年9月17日

 それでは一般産業のように長期的にまた通年で安定雇用することはできない。また資本も機動的に出動させねばならないのだ。

 その1番の失敗例がかつての国有林野事業である。その経緯を見れば、大規模経営、安定雇用、収入の安定は不可能と言ってよい。林業の産業化もまた見果てぬ夢なのだ。

 現在の一般の社会経済の通念からかけ離れたところに林業経営の神髄がある。端的に言えば、待ちの経営に徹するべきなのだ。図の赤い⇔の部分を増やしていけばいいのだ。そして、価格の上昇に敏に反応してチャンスがくれば伐採する。

 普段は自然に従属した森林施業で徹底的に支出を抑えることである。価格の上昇は災害などによる特需によって生まれ、林齢を重ねればビンテージものの木材、すなわち銘木が生まれる。貧乏性の行政は、江戸の時代の豪商を真似た方がよい。

価格上昇につながらない木材利用拡大策

 令和7年度森林・林業白書では、木材利用拡大に向けた取組についてかなりの力を込めて紹介している。

 建築物の材料としての木材の欠点は、防火と強度にある。鉄骨や鉄筋コンクリートにまったく太刀打ちできず、高層建築において一顧だにされない状況が長く続いていた。しかし、木材には軽さ、加工しやすさ、自然素材の柔らかさという長所もある。

 だから、3階建て以下の低層住宅の分野では圧倒的なシェアがある。そこで、非木質系の高層建築のシェアを奪うべく技術開発が進められ、それに伴う規制緩和を行ってきた。

 そして最近シンボル的な事例として登場したのが、大阪・関西万博の「大屋根リング」である。全周約2キロメートル(km)、高さ約 12~20メートル(m)で、約2万7000立方メートル(㎥)の木材が使用された。25年3月には、「最大の木造建築物」として、ギネス世界記録に認定された。

 柱と梁(はり)にはスギやヒノキなどの集成材が使用され、来場者が歩くことのできるスカイウォークの床(屋根材)には直交集成板 (CLT)が使用された。約7割が国産材(ス ギ、ヒノキ)、約3割が輸入材(オウシュウアカマツ)だった。

 CLTとは下図のような構造の分厚いベニヤのようなものだが、写真のようにラミナは節あり材でも目粗材でもかまわない。新規に開発されたこのような集成材は、並材を組み合わせて、強度を高める仕組みにしているから、その原料になる丸太も並材である。

 加工されたCLTは付加価値のついた立派な製品であるが、原料の丸太は安ければ安いほど良く、製品作りには最も大事なことだ。しかし、原料を供給する林業側には価格面でのメリットはない。

 また、CLTなどの木材製品を使用した高層建築も期待されているが、やはり在来の工法に比べて建築費が高く、ただでさえ建築費が高騰する中で、一般化が難しい。林業関係団体が所有するビルたちも建て替え時期に差し掛かっており、率先して木造化したいところだが、見送らざるを得ないのが実情という。

 木材利用を拡大すること自体は素晴らしい。鉄骨や鉄筋コンクリート建築を駆逐して、木造率を高めてもらいたい。世界のために、温暖化防止のためにも大事なことである。

 筆者は温暖化防止のために国産材、外材を問わず木材を使うべきだと思う。しかし、この取組が我が国の林業の経営改善につながることはないと思う。

 かつての高齢級ヒノキ優良材のような絶対的価値を創出しない限り、日本林業に光は見えてこない。

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