ウクライナでの戦争が5年目に突入する中、欧州はハイブリッド戦による攻撃に見舞われている。その中には、ドイツのライプツィヒ空港を標的としたドローン攻撃の試みも含まれ、ロシアの仕業であるとみられている。
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NATO諸国への工作活動の変化
今般のラトクリフ長官による訪露関連の情報で最も注目すべきと思われる点は、欧州における軍事的緊張が、非常に危険な水準に達しつつあるとの認識を米情報機関が持つに至り、それが同長官の訪露を促す決定的な要因になったということだ。この流れを変えるには、外交上の公式「会談」ではなく、情報機関を通した意思疎通が必要と判断したのであろう。
大きな流れとしては2024年頃からであるが、特に本年に入って以降、ロシアによる欧州NATO諸国に対する工作活動には質的な変化がみられる。以前の工作は、エネルギー面での締め付け、サイバー攻撃、選挙介入など、政治的・経済的・心理的プレッシャーをかけるものが中心であったのに対し、最近は物理的な破壊や暗殺など、直接人命にかかわる工作活動が実行されている。最近では次のような事例がある。
①7月上旬、年初にドイツの軍事企業ラインメタル社最高経営責任者(CEO)の暗殺計画があったことが報じられた(ラインメタル社はウクライナ企業と合弁企業を設立し、装甲戦闘車両、火砲、弾薬等を共同生産している)。
②8月上旬、ドイツのライプツィヒ・ハレ空港で、ウクライナの軍用機の主翼に爆発物搭載のドローンが衝突した(ただし、起爆装置の不具合で爆発しなかった)。
③8月下旬、黒海にあるルーマニアのガス掘削施設付近で爆発物搭載の水上ドローンが発見された(ルーマニアのF-16戦闘機が爆破処理した)。
④8月初め、エストニアの軍用ドローン開発企業の施設が放火された。このほか、本年初頭から半ばにかけて、チェコ、リトアニアでもドローンや無線技術関連の工場が放火されている(リトアニアは未遂)。
このような、物理的な破壊や人命喪失につながるような隠密の工作活動は、しばしば(ハイブリッド・ウォーではなく)「シャドー・ウォー」と称される。ロシアは以前から、NATO条約第5条の信頼性を棄損させ、欧州を分断するとともに、自国防衛を優先する国が増えることでウクライナへの軍事支援を抑えることを狙ってきたが、最近、米国が弱体化しつつある今がその好機と考え、この動きをさらにエスカレートさせている可能性は十分にある。
ただし、これらの事象については、いずれの被害国も、具体的な証拠をもってロシアの仕業であることを確信しているが、司法手続きを経た上で法的にロシア政府・機関による犯行であると確定している訳ではない。
